3位は安土城(滋賀県)、2位は岡城(大分県)、1位は…歴史評論家が選ぶ「あえて寒い冬に訪れるべきお城」ランキング
■雪のなかで眺める寒冷地仕様の城の美しさ いよいよ第1位だが、加賀前田家100万石の居城、金沢城(石川県金沢市)としたい。石川門をはじめ現存建造物もある金沢城は戦後、中枢部が国立金沢大学のキャンパスになっていた。だが、大学が平成7年(1995)に移転すると、都市公園として復元整備事業が急ピッチで進められた。 同13年(2001)に菱櫓、五十間長屋、橋爪門続櫓、橋爪門一の門が復元され、同22年(2010)には実質的な正門だった河北門が復元され、令和2年(2020)には鼠多門も蘇るなど、城のイメージが一新されたといっていい。いずれも発掘調査および絵図や史料をもとに、往時と同じ工法による木造で復元されたことに価値がある。 そして、金沢城にはこの城だけの意匠が多い。現存する石川門を例に説明すれば、白銀色に輝く屋根には、瓦型の下地に鉛の板を巻きつけた鉛瓦が葺かれている。積雪や氷結を考え、耐久性が高く軽量な屋根材を選んだと思われるが、おそらく美観も意識されている。壁面の下部が平瓦を張りつけた海鼠壁になっているのも、寒冷地ならではの耐久性と同時に、美しさを考慮したものだろう。 また、櫓の各隅は筋鉄を打って柱に見せかけており、これも耐久性をねらいながら、壁面の白さを際立たせたものと思われる。 こうした意匠はまだまだあり、積雪が多い寒冷地ならではの種々の耐久仕様が、美観を意識しながら施されている。いうまでもないが、その美しさは寒い時期、とりわけ雪が積もったときにこそ、実用性を兼ねて映える。 ここに取り上げた8つの城のなかで、いちばん積雪量が多いのは金沢城だが、北陸新幹線で気軽に訪れることができ、冬場の利便性も高い。まさに1位にふさわしい城だと考える。 ---------- 香原 斗志(かはら・とし) 歴史評論家、音楽評論家 神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。日本中世史、近世史が中心だが守備範囲は広い。著書に『お城の値打ち』(新潮新書)、 『カラー版 東京で見つける江戸』(平凡社新書)。ヨーロッパの音楽、美術、建築にも精通し、オペラをはじめとするクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』、『魅惑のオペラ歌手50 歌声のカタログ』(ともにアルテスパブリッシング)など。 ----------
歴史評論家、音楽評論家 香原 斗志