“なじみがない”が“懐かしい”に…前橋出身の巨人・井上に吹いたホームの風 ご当地選手の起用に多くのメリット
◇渋谷真コラム「龍の背に乗って」 ◇3日 巨人6―1中日(前橋・上毛新聞敷島球場) 2日に行われた松本での巨人戦で勝ち投手になった小笠原が、試合後にこんな本音をもらしていた。 「下(マウンド)がコンクリートかと思うくらい硬かった…」 1週間前の倉敷(阪神戦)は、その真逆で柔らかさに苦しんだそうだ。慣れ親しんだ各本拠地とは違う。それを何とかするのがプロの使命。小笠原にとってはどちらも人生初の球場だったが、事前に「こっちが合わせにいかないといけない」と話していた通り、見事に2連勝を飾っている。 8イニングを無失点に抑えられた巨人・井上は、前橋市出身。天候不良で中止となったが、盛岡での楽天戦で、オリックスは岩手県出身の斎藤が先発する予定だった。井上は4イニングから中5日、斎藤は同じく4イニングから中10日。ローテーションをやりくりしてでも地元での登板機会をつくっているのだ。彼らだけではなく秋田でヤクルトがやれば石川、沖縄で試合があればソフトバンク・東浜や西武の平良、与座らご当地選手が先発する。もちろん故郷に錦を飾らせたいという首脳陣の配慮や、たくさんのファンが来てくれるという興行面の利点が理由だろうが、それ以外にもメリットはあると思う。 この日でいえば、マウンドだけでなく、見ているだけの僕でも閉口するような高温と多湿との戦いも強いられた。そうした気候や球場の風、施設の特徴。「なじみがない」と思うところをご当地選手は「懐かしい」と感じられる。巨人の主催試合ではあるが、井上はさらに「ホーム」を実感したことだろう。 近年では地方開催でも本拠地のスタッフが前乗りし、少なくともマウンドはプロ仕様に整えるのが常識になっている。もちろん、今回の松本、前橋も関係者が懸命に作業しただろうが、それでも「いつもと同じ」とはいかない。そんな中、終盤3イニングも併殺打でスイスイと投げ切らせてしまったのは、やはり井上にホームの風が吹いていたからだろうか…。
中日スポーツ