ソロ活動30周年にして初のライフスタイル本を発売し大反響! 奥田民生「僕はもう"自分らしさ"なんて考えないです。勝手に出るだろって」
――心の逃げ場をつくっておくと楽に生きられると。 奥田 完璧主義者みたいな人は大変だと思うけど、僕は割と「取っ散らかって中途半端ですみません」ぐらいの感覚なんです。 ただそうやってできたものでも、酷評されて「もうおまえに仕事はやらない」とまで言われたことがないので、そのへんはちょっと安心してます。あと人を判断したり、人にどう思われるかっていうのは着ているものなどが大きいと思うんです(笑)。 ――だいたい、人は見た目でイメージを作りますよね。 奥田 オレはこんな格好の人だから許されてる、っていうのは全然あると思います。 ――過度に期待されすぎない、みたいな。 奥田 そう。だから無駄にビシッとしすぎないほうがいいんじゃないかと思ったりします。 ――いずれにせよ、どんな曲も世に出してみないと評価はわからないですし。 奥田 自分の中で「ものすごいのができた!」と思っても、それが伝わるかはまた別の話。自分では100点だと思ってても70点ぐらいって言われることもあるし、その逆も全然あるし。だから期待しないというか、100点の評価を求めないっていうのはありますね。 ■ソロが一番モチベを上げるのがムズい ――長く活動されてきて音楽を作るモチベーションは変わってきたりしてますか。 奥田 変わってないです。モチベーションは、好きで聴いてた音楽への憧れなんです。中学、高校の思春期の頃にわーって聴いてた音楽って、ずっと血肉になってて変わらない。だから、自分が弾くギターの音色もそんなに変わってないです。 あと僕はもう制作のときに「自分らしさ」なんて考えないです。そんなこと言わなくても勝手に出るだろ、みたいな(笑)。いちいち自分らしさとか言ってたら狭苦しくなりそうじゃないですか。悩んだときは好きなアーティストのいい部分を参考にすることはありますけど。
――以前、斉藤和義さんが新しいギターを買うと曲ができるとインタビューで話されてましたが、奥田さんもそういうことはありますか? 奥田 いっぱいありますよ。ギターってそれぞれ音が違って、だから曲によってギターを持ち替えるんです。僕は作曲するときはずっと同じギターを使ってる。大したことない、20年くらい弦を張り替えてない長年の相棒です(笑)。 でも、新しいギターを買うと当然弾くし楽しいから、それで曲ができるってことはありますね。ゴルフでも、新しいクラブを買うと熱心に練習するみたいなのと一緒ですね。 ――あと奥田さんはソロ活動以外にユニコーン、カーリングシトーンズなどいくつもバンドやコラボをやってますが、そのときどきでご自身の気持ちも変わると思うんです。 奥田 当然ですが、周りの人が変わるとモチベーションは大きく変わります。だからソロが一番モチベーションを上げるのがムズいんですよね。誰のためでもないから。なのでつい後回しになっちゃう。 ――ソロアルバムの最新作は2017年の『サボテンミュージアム』。7年前ですね(笑)。 奥田 でもユニコーンが再始動してるんだから、それもオレの作品ってことでいいじゃないか!みたく逆ギレをしてます(笑)。まあ、ソロはそのうち出しますよ。 ■60代はもうちょっとこのままいきます ――本でもたびたび触れていましたが、年齢でしんどいなって思うときってありますか。 奥田 ありますよ。音楽やっててしんどいことはそんなにないけど、単純にいろんなことがペースダウンしてると思う。でも、それは自然なことですよね。だからローリング・ストーンズみたいなのが珍しいだけで、普通はそうじゃないんですよ! ――ローリング・ストーンズにしてもポール・マッカートニーにしても80歳超えてワールドツアーをやっています。