『風来のシレン6』やり込みライターが開発者にインタビュー。「祝福された巻物は必ずラッキーが出る」など細かい話もたっぷり聞いた。アプデ第2弾も予定「長く楽しめる作品にしたい」
「1000回遊べる」をキーワードに、長きにわたってファンに愛されてきた『風来のシレン』。2024年1月25日には、ナンバリングタイトルとしてはじつに14年ぶりとなる最新作『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』(以下、『6』)を発売した。 【記事の画像(16枚)を見る】 ダンジョンで倒れてしまうと、持っていた道具をすべて失ってしまったり、レベルが1に戻ったりとシビアなゲームシステムながら、絶妙な難度でくり返し遊びたくなる魅力が詰まっており、シリーズ最速で出荷本数20万本を達成するなどヒットしている。 本稿では、ゲーム発売後に行った開発者3名へのインタビュー記事を掲載。発売後だから聞けるさまざまな開発秘話に加え、現在開発中となる追加コンテンツに関する情報などをお届けする。 記事中にはゲームの攻略情報も小ネタとして掲載しているので、現在プレイ中の人こそ必見! 冨江慎一郎氏(写真左)(とみえ しんいちろう): 『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』シナリオライター。シリーズには第1作から携わる 櫻井啓介氏(写真中央)(さくらい けいすけ): 『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』ディレクター・アートディレクター。 篠崎秀行氏(写真右)(しのざき ひでゆき): 『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』プロジェクトマネージャー。 ファンに満足してもらえたからこその好セールス ――本作はシリーズ最速で20万本出荷を達成されたそうですね。発売後のユーザーの反応を見て、どういった感想をお持ちですか? 篠崎: まずセールス記録に関しては非常にうれしいです。我々が想定していた以上のセールスですし、お客様の「おもしろい」という声も多く見られ、好意的に受け取っていただけて安心しています。 ――目標とされていた販売計画よりも高かったと? 櫻井: はるかにいいです。 篠崎: 『風来のシレン』はじわ売れしていくシリーズなので、最初にドーンと売れた現状に驚いています(笑)。 ――非常に好評を得ている本作ですが、売れた理由はどうお考えですか? 冨江: やはり、お客様と向き合って真摯に作ったというのがいちばんだと思います。 ――ユーザーがやりたい『風来のシレン』が作れたからだと。 冨江: 現在はSNSや動画配信サービスでお客様の反応が見えやすくなってきています。前作の発売から14年が経過していますが、そのあいだにファンの声を拾って、それを反映したものが作れたと思っているので、そこを評価していただけたんじゃないかなと。 ――これまでに『風来のシレン』をプレイしていなかった動画配信者も本作を配信したりと、新規層にもアピールできていると感じていますが、いかがでしょうか。 篠崎: やっぱり“ダンジョンで倒れたらすべてゼロになる”というのが未経験者から見るとネガティブなイメージに感じる要素なので、ほかのゲームと比べて未経験者が参入しにくいゲームだとは思っています。でも、『風来のシレン』のおもしろさって、まさに“そこ”じゃないですか。 本作ではシリーズ経験者の方に“そこ”のおもしろさを感じていただけていると思っていて、そのおかげで熱量高く拡散されているんじゃないかと。その口コミが多く広がり、新規の方にも訴求できているのだと考えています。 ――『風来のシレン』では新規が入りやすいゲームを作るという方向性よりも、シリーズファンの方が熱中してくれるゲームを作るほうが、より多くの新規層を獲得できると思ったんですね。 冨江: 自分はおもしろくても、ルールが特殊すぎてほかの人に勧めるのはどうだろうって躊躇するタイプのゲームだと思うんです(笑)。でも、とにかくやってくれる人がおもしろくて熱量が高いゲームにできれば、その姿を見た人もプレイしたくなるかなと思ったんです。新規層向けにゲームを作るよりは、そっちを期待して。 ――14年ぶりの新作と、 くり返し言っていますが、『不思議のダンジョン 風来のシレン5plus フォーチュンタワーと運命のダイス』では、“新作の壺”というアイテムを押すと、新作に対する冨江さんの想いを感じ取ることもできました。シナリオを制作・監修する冨江さんにとっては本作の発売は、とくに感慨深いものだったのではないでしょうか。 『不思議のダンジョン 風来のシレン5plus フォーチュンタワーと運命のダイス』 冨江: そうですね。発売できたことももちろんうれしいですが、『6』を皆さんに喜んでいただけたことがいちばんうれしいです。ユーザーの皆さんが買い支えてくれたことによって新作を出すことができたので、とにかくいまのファンの方の期待を裏切らないゲームにしなければと強く考えていましたから。 濃密なワンプレイを体感してほしい ――開発を統括する櫻井さんとしては、どういったコンセプトをもとにゲームを作られたのでしょうか。 櫻井: 『不思議のダンジョン 風来のシレン2 鬼襲来!シレン城!』からは、道具を持ち帰って強化して進むというのがゲームの主流のサイクルになっていました。ですが今回は、『風来のシレン』の“倒れればゼロになる”、“ダンジョン内ですべてやりくりする”というシリーズ本来のゲーム性が楽しめるようにゲームをデザインしました。 ――逆に、シリーズのビギナーの方のなかには、ストーリーの攻略を難しく感じる人もいそうです。 櫻井: そうですね。持ち帰って強化して……というのももちろん楽しいのですが、我々としてはプレイヤー全員に持ち込み不可の“もっと不思議のダンジョン(本作の場合は、とぐろ島の神髄)”をクリアーしてほしいので、そこに向けてゲームバランスを調整しているという意図があります。 ――さまざまなダンジョンで、もっと不思議のダンジョンの練習をするということですね。合成の壺やマゼルンに加え、旅仲間がストーリーを進めていくうちに徐々に増えていくというのも、第1作に寄せたからですか? 櫻井: 旅仲間については救済措置というか、クリアーできない人でも、くり返しダンジョンを冒険していけば追加要素が解禁されてクリアーしやすくなるようにしたかったからです。仲間の強さについては、強さに慣れてしまうと仲間が登場しないダンジョンがきびしく感じてしまうので、ちょうどいいバランスになるように注意しました。 ――本作の旅仲間はすごく強いですよね。過去作だとけっこう頼りない印象がありました。 櫻井: 今回はそのあたりをきちんと設定してあります。ストーリーをクリアーするまでなら、すごく頼れる存在になるのではないでしょうか。 ――脱出の巻物がストーリーのクリアー後から登場するのも驚きました。 櫻井: 「脱出の巻物の登場が遅い」というご意見もあって、装備を育てるのが好きな人も思ったよりも多いんだなと思いました。 冨江: 最初は脱出の巻物はそもそも実装しない予定だったんです。 ――なんと。それくらいの意気込みだったんですね。 櫻井: 社内では「なくてもいいんじゃないか」という意見も多かったです。ただ、伝統的なものだし、持ち込み可のダンジョンでいますぐ帰りたいときもあるだろうし、最終的には実装することになりました。 ――そういった理由から、クリアー後にのみ登場するんですね。 櫻井: そうですね。その反面、倒れても保険になる復活の草は出やすくなっています。 ――そこでバランスを取っているんですね。クリアー後はいろいろな要素が解禁されますが、ダンジョンについては20階や25階など、中層でクリアーとなるダンジョンが多い印象です。 櫻井: クリアー後にプレイできる特殊なダンジョンは、好きな人は好きだけど、合わない人は合わないじゃないですか。合わない人に99階までプレイしてもらうのはたいへんだと思っているので、こういった設定に。 ――推測の修験道など『風来のシレン』のいろいろなテクニックが学べる短めのダンジョンがたくさんあるので、個人的にも「もっと不思議のダンジョンをクリアーしてほしい」という意図をすごく感じました。 櫻井: そう思っていただけるとありがたいですね。そのほか、“濃密なワンプレイにしたい”というコンセプトも掲げて開発していました。これまでだと、ワンプレイ5時間以上かけて、クリアーできるかできないかを楽しむようなゲームバランスでしたが、凡ミスや理不尽なハプニングで倒れてしまったりすると、「もうやらん」と思ってゲームの止め時になってしまうこともありました。 今回は「ワンプレイはサクっと終わるんだけど、濃密なプレイ体験ができるようにする」といったことをチームメンバーの共通意識として持ち、どのダンジョンも短いけど濃いプレイ体験ができるようになっているかと思います。 ――なるほど。そう考えると、とぐろ島の神髄も低層が難しく中層以降は比較的楽になるようなゲームバランスに感じるのですが、これもそういった意図によるものでしょうか。 櫻井: 50階くらいまでしっかりと装備を整えたのに、その後理不尽に倒れてしまって終了、みたいなのはおもしろくないと思うんです。前述の濃密なワンプレイのことも考え、低層に難しい部分を配置し、装備が整った中盤以降は、凡ミスをしなければ安定してクリアーできるような難度とモンスターの配置にしてあります。 ――倒れるなら早めに倒れてもう1回、中盤以降はドキドキを楽しんでほしいという。たしかに、前半が難しく後半は集中力との勝負みたいにしたほうが倒れても「もう一度やろう」という気になるかもしれませんね。 櫻井: 低階層でリトライできれば、ワントライが短くなりますからね。ある程度道具が揃ったら、あとはヒヤヒヤするプレイを楽しんでいただくほうが満足感があるかなと。我々としてはずっと楽しいプレイを続けてほしいので、低階層でリトライが増えるようにして、深層はちょっとキツイくらいのほうが、ストレスのバランスが取れるんじゃないかと考えています。 冨江: 『風来のシレン』でもっともおもしろさを期待されているのがもっと不思議なダンジョンなのはわかっていますので、とぐろ島の神髄はとにかくバランス調整とテストプレイに多くの時間を割きました。 篠崎: 意識していることは“理不尽=難しいではない”といったところですね。エンドコンテンツを制作するとなるとどうしてもそっちに行きがちなので、チームメンバーとしてはかなり意識していました。 櫻井: 本当になすすべもないのはおもしろくないと思いますし。また、モンスターが凶悪なことをしてきても、何かしらの対策ができるようにしようというのも念頭にありました。 ――たしかに、本作の盾には、モンスターの特技に対応する効果がある盾が多く追加されていますよね。オトトの盾やカッパのお皿など。やさしさを感じます。 冨江: 理不尽なハプニングが起こっても、振り返ってみると、「なるほど、こんな連鎖があるんだ」と思える部分が多いかと思います。あと、本作での理不尽は、ピタゴラスイッチ的な、いろいろな条件が絡まって起こるものが多いのですが、そこまでいけばもう笑いに昇華できるんですよね。「こんなおもしろい倒れかたしたよ!」とSNSで周囲の人に笑いを提供するネタにできますし。 ――理不尽な倒れかたをしてもSNSでネタにできれば溜飲を下げられますしね(笑)。モンスターも、Lv4の性能が一部やさしくなっていたりと、温情を感じています。『5』のしょうめつトド(※1)は本作ではマジックトド(※2)になっていますし。 ※1 しょうめつトド:『5』での、ぬすっトドのLv4の姿。シレンから道具を盗んだあと、フロアから消えてしまう……。つまり回収不可。許さない。 ※2 マジックトド:『6』での、ぬすっトドのLv4の姿。シレンから道具を盗んだあと分身し、倒すと雑草を落とす偽物が出現する。本物を倒せば道具を回収できるので、まだやさしい。でも許さない。 櫻井: さすがに消えちゃうのはまずかったかなと……。 ――そのほか、ギャザー(飛び道具や杖がほとんど効かないタフなモンスター)やフィアーラビ(シレンとモンスターを自分の周囲に集めるモンスター)など、一部モンスターが未登場となっています。 篠崎: さきほどの話にもつながるのですが、対策できなかったり理不尽なモンスターは登場させないというコンセプトに従い、一部モンスターは未登場になっています。このあたりのモンスターは対策のしようがない場合が多いので。 ――フィアーラビはドスコイ状態や不動の盾で対策できるかと思いますが、限定的ですしね。話は変わりますが、今回の新要素として“ボヨヨンの壁”が登場していますが、この要素についてもお伺いできますか? 櫻井: 道具を投げて跳ね返るような要素を入れられないかと考えて実装しました。その後、跳ね返るだけだとおもしろくないよねということで、上下左右4ヵ所に跳ね返ればなぜか道具が増えるように。 ――ボヨヨンの壁を見つけて「やった!」と思っても、道具を増やせない壁の配置だったりするのがやるせないです(笑)。 櫻井: 紆余曲折あったのですが、部屋の形によってはできるものもできないものもあってもいいよねという結論になり、いまの仕様になりました。 ――ユーザーのあいだでは土塊の杖とボヨヨンの腕輪を使って強引に反射させて増やすようなテクニックもありますが、あれは意図したものでしょうか。 篠崎: じつは我々も発売後に気がつきました(笑)。意図していないテクニックですが、ゲームバランスを壊すようなものでもないし、状況が限定されるものなので、とくに修正等は考えていません。そこまで楽しんでいただけてうれしい限りです。無限増殖バグみたいなものでない限りは、基本的にはあとから見つかったテクニックはそのままにするつもりです。 ――ちなみに、あれってあの世界のどんな原理で増えているんですか? なぜ壁に当てると物質が増えるのか……。 櫻井: 謎です。過去には道具を入れると増える壺もありましたしね。 ――謎(笑)。そのほかのダンジョンですと、ヤマカガシ峠はとぐろ島の神髄よりも難しい、と言う人もいます。 櫻井: ヤマカガシ峠は、“プチもっと不思議”的なもっと不思議のダンジョンの短いバージョンといったコンセプトになっています。短いダンジョンなので、道具の引きが悪いときの難度はとぐろ島の神髄よりも高く感じるんでしょうね。ボスもいますし。 ――星の石を集めてクリアーする、いわゆる“裏神髄”についてはどういったアイデアで生まれたのでしょうか。 櫻井: これは長畑(長畑成一郎氏。冨江氏とともにシリーズ1作目から開発に参加するゲームデザイナー)のアイデアです。道具欄を圧迫させて難度をアップさせるという。 冨江: 裏神髄はやりたい人がやればいいくらいの立ち位置にしたかったので、自分で選択できる追加ルールにしました。とぐろ島の神髄とは異なるダンジョンにしてしまうと、「クリアーしないといけない」と思う人もいるでしょうし。 ――遊びたい人だけ遊べばよいと。星の石を集めるのがたいへんですが、がんばればクリアーできる絶妙な難度だなと感じます。 櫻井: そう思っていただけるとうれしいですね。 ――その攻略の後押しとなるシステムとして、道具やモンスターの情報がゲーム内で閲覧できるのが非常にありがたい機能でした。とくに、お店に入ると床に置かなくても売価が表示されるのが神システムです。 櫻井: 過去作では、PCやスマートフォンを横に置いて攻略情報を見ながらプレイするスタイルの人も多かったと思いますが、本作はインターネットいらずでプレイできるようにしたいというコンセプトも掲げていたんです。 ――共鳴が発生する武器と盾の関係など、隠し要素的なものもほぼすべてが公開されているのもありがたいですね。 櫻井: 過去には玄人は知っていてビギナーは知らないような情報も多かったので。テクニックは自分で身につける必要がありますが、数値や仕様などの情報はゲーム内でオープンにして、情報格差が生まれないようにしています。 ――これのおかげで寝転びながらプレイできるのがありがたいですね。ちなみに、まだユーザーにバレていなさそうな隠しネタなどがあれば教えていただけますか? 櫻井: けっこうバレてしまっていますが、おそらくまだバレていないネタをひとつ。今回祝福されている巻物は、必ずラッキーが出るようになっています。 ――本作はやけにラッキーが出るなと思いましたが、そういう仕様だったんですね。本作では祝福の巻物や壷が登場しないので、祝福された道具は熱狂の祭りの効果を受けるか拾うことでしか手に入りません。そのためか、祝福された道具が拾えることが多い気がするのですが、その反面、呪われた道具もすごく多い気がするのですが……。 櫻井: バランスとしては『4』や『5』と同じくらいの確率になっているはずです。ですが、自分も下げればよかったかなと思っているところです(笑)。 ――悪いことは記憶に残りやすいというやつのせいでしょうか。 櫻井: そのはずです(笑)。あと、変化の壷に道具を入れると別の種類の道具に必ず変化するようになっています。 ――たとえば、杖を入れれば杖以外の道具に必ず変化するということでしょうか。 櫻井: そうです。これはすでにバレていますが、杖と巻物の領域のダンジョンでは変化の壷に道具を入れると白紙の巻物に変化しやすくなっています。効果を最大限に活用するなら、変化の壷には巻物以外を入れるようにするといいと思います。 ゲームシステムに寄り添う冨江シナリオ ――『風来のシレン』といえば、冨江さんが手掛けるシナリオも魅力のひとつですが、本作ではどんなコンセプトでシナリオを作成されたのでしょうか。 冨江: 今回は“ゲームに寄り添う”ということを念頭に置いてシナリオを作成しました。まずゲームシステムとか登場するダンジョンのルールとか、そういうものがある程度用意された段階で、ゲームの邪魔にならないようにシナリオを構想していった形です。 ――本作では、ゲームシステムありきのシナリオになっているんですね。 冨江: そんなに長いシナリオにはできないですし、短くてもおもしろいシナリオに、というのは意識していました。 ――シナリオを作るうえで、苦労したことはありましたか? 冨江: 苦労したというか挑戦したところといえば、オープニング直後のジャカクー戦をクリアーできれば、いきなりエンディングになるところです。 ――ユーザーのあいだでも、このジャカクーを倒すとどうなるんだ? と言われていましたが、まさかのエンディングとなり話題になっていました。 冨江: いきなりエンディングを見た人と通常どおりのシナリオでクリアーした人でシナリオの整合性が取れなくなってしまうといけないので、そのあたりはかなり注意していました。結論としては、エンディングですべてのお話が終わらないようにすればいいということになり。 ――なるほど。エンディング後にもシナリオが続くのには、そういった意図があったんですね。 篠崎: 発売日の0時5分くらいでもうクリアーされてしまって、びっくりしましたね。 櫻井: ちょっと早すぎかなとは思いました。思ったよりももたなかったというのが正直な印象です。開発内ではもっと難しくしようかみたいな話もあったのですが、このあたりがいいバランスだろうということに落ち着きました。 冨江: いきなりエンディングになるゲームもそうそうないと思うので、おもしろい内容になったんじゃないかと思います。ちなみに、最初にボス戦を入れるというのは、篠崎の発案でした。 篠崎: シナリオが完成するまえから、「チュートリアルでボスを出して、そのまま倒せるようにしたい!」と言い続けていて。 冨江: 「それいいじゃん」ということで、倒したらエンディングになるように。 ――開発チームもノリノリだったんですね。ジャカクーを倒したあとには、神の兄弟ゲンカのお話が始まります。 冨江: 今回のとぐろ島のような、空飛ぶ島を冒険の舞台にしたいというアイデアはもともとあって、本作ではこの島自体が神さまだという設定をあとから追加した感じです。最初はもっとシナリオが複雑だったんですけど、ゲームのボリュームなどを鑑みて、ちょっとあっさり目になりました。 ――狐渇とシレンが合体して進むダンジョンもありますが、この要素はシナリオとシステムとどっちが先に考案されたのでしょうか。 冨江: これはシナリオが先で、狐渇にダンジョン攻略をさせたいと考えていました。でも、シレンがいないのはどうなの? という意見もあったので、みんなで話し合って「なら合体させちゃえばいいじゃん」というふうに。 櫻井: もともと、ストーリー上に特殊ルールのダンジョンを入れようという話もしていたので、シナリオと組み合わせて狐渇シレンを実装しました。 ――シナリオについてでは、これもSNSで少し話題となりましたが、ストーリー中に再会したアスカのことをコッパが覚えていないというシーンがありました。 冨江: ありますね。じつは、こっちはあまり話題になっていないのですが、『不思議のダンジョン 風来のシレンGB2 ~砂漠の魔城~』でも、過去に会っているはずのマーモ(旅仲間。タンスの姿をしていて、余った道具を保存しながらついてきてくれる)のことをコッパが覚えていないという描写がありました。これは設定の間違いではなくて、そうなっている理由があるのですが、まだゲームでは描かれていません。 ※第1作『不思議のダンジョン2 風来のシレン』でも、コッパが「コンビを組んで、はや半年」と言っているシーンがある。シレンとコッパとアスカは、シレンの少年時代からの付き合いのはずだが……? ――ちゃんとした理由があるのですね。 冨江: タイミングが合えば、いつかはそのエピソードをできればいいなと思っています。SNSはけっこう見ていますが、いろいろな憶測や考察が飛び交っていておもしろいです。皆さん、よく見ていただいているなと。 大ボリュームの追加コンテンツ! しかも無料! さらに今後の展望も ――追加コンテンツの配信も始まりましたね。 篠崎: エンドコンテンツの拡張をメインとする機能追加アップデートを配信しましたが、この追加コンテンツは当初から予定していたものです。狐渇シレンを全ダンジョンで使えるようにしたり、さまざまなモードやミニステージなどを無料で追加しました。 櫻井: 前述の通り、『風来のシレン』は発売後もじわじわと売れたりプレイされたりするタイプのゲームなので、その流れを後押しするために無料でのご提供とさせていただいています。 ――今回の無料アップデートでシナリオの追加などはあるのでしょうか。 冨江: いえ、ダンジョンの導入時に少し会話が挿入されるくらいです。 ――今後も『6』の開発が続いてくれると、いちファンとしてもうれしいですが、シリーズの今後のことも気になるところです。本作が好調のセールスを記録したことで、会社としては次回作を検討しやすくなったのでしょうか。 冨江: 今後のことはそれが落ち着いてからですね。現状は、まだ「ある」とも「ない」とも言えません。 櫻井: 本作が非常に好セールスを記録したことで、予想以上に多くのご意見をいただいています。「ここをこうしてほしい」といった改善案もたくさん見られるので、まずはこういったご意見に対応して、本作の完成度をより高めていきたいと開発チームでは考えています。 篠崎: 『6』については、今回の無料アップデートだけに限らず、第2弾も予定しています。『6』をより長く遊んで頂ける作品にしていきたいと考えております。 ――『6』の開発もまだ完了していないなか恐縮ですが、次回作として『7』があるとしたら、どんなゲームにしたいと考えますか? 冨江: 私自身としては、今回の持ち込みを重視しないゲームバランスはすごくよかったなと思っています。『風来のシレン』のいちばんのおもしろさにふたたびスポットを当てられて、それが高い評価をいただけたので、これは継承していきたいです。その反面、同じことをやっても仕方ないとも思っているので、どこを変えずにどこを変えるのかというのは悩ましいところですね。 ――『6』のアップデートや、シリーズの今後に期待させていただきます。最後に、今後の意気込みやユーザーへのメッセージをお願いできますでしょうか。 冨江: 本作を遊んでいただいて、本当にありがとうございます。現在追加コンテンツをバリバリ開発中なので、こちらも楽しんでいただきたいです。バグの修正も、積極的に行っていきます。ファンの皆さんあっての我々なので、そこに寄り添ってこれからもがんばっていきますので、よろしくお願いいたします。 櫻井: 我々の想像以上の売上を達成することができて、うれしく思っています。本作で初めてシリーズに触れた方も多い印象ですが、やっぱりルールが難しいゲームなので、クリアーできずに止めてしまった人もいるかと思います。そんな方に向けた対応もしていきたいと考えているので、お待ちいただければと思います。 篠崎: “シリーズ最速のペース”といううれしいお知らせをご案内できて、とてもうれしく思っています。何十年ぶりにシリーズをプレイしたというご感想もたくさんいただきました。14年ぶりの新作ですので、久しぶりにプレイする人も多いだろうと予想していましたが、想像以上にそういった方が多くてうれしいです。リリースしただけではなく、今後もバージョンアップは続けていきますので、今後の『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録』にご期待ください!