再度の株価下落に注意 15の指標にみる「危険信号」
日経平均株価は2万1000円台を回復し、上昇局面に入っています。しかし、第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは海外の企業サーベイ指標のいくつかは「危険信号」を発しており、再度の株価急落に注意が必要だといいます。藤代氏の解説です。 【グラフ】アベノミクス以降で最も弱い「世界景気の瞬間風速」に懸念
消費者信頼感指数など15指標ピックアップ
日本の株価は戻し基調にあるものの、世界経済の減速を示す経済指標が相次いでおり、再度の株価急落に注意が必要です。企業景況感は米国以外が総崩れ状態にあり、頼みの米国が崩れると投資家マインドが崩壊する恐れがあります。そこで本稿では速報性に優れ、かつ市場関係者の注目度が高い15の指標について、それらが発する危険信号に注目します。 15の指標は、米国、アジア、ユーロ圏の企業サーベイ指標(≒アンケート調査)が中心。サーベイ指標は、国内総生産(GDP)や雇用統計のようなハードデータに比べて速報性に優れており、金融市場の注目度が高いのが特徴。その中から景気や株価に先行性を有すると考えられるものをバランスよくピックアップしました。企業景況感以外では、米国の内需(≒他国からの輸入)の動向をいち早くつかむために「自動車販売台数」と「CB消費者信頼感指数」「新規失業保険申請件数」を採用。なお、韓国、台湾の指標を採用したのは、両国が電子部品の2大生産拠点だからです。
6つの指標がトレンドから下方乖離
これらの指標を用いて、株価急落の危険度合いを模写した結果がグラフの通りです。危険信号は、直近値がトレンド(36か月平均)を大きく突き抜けた指標をカウントし、その割合を計測したものです(詳細はグラフ参照)。経済指標の「水準」に着目するのではなく、「トレンドからの乖離」を重視しています。経済指標の解説では「6か月前から下落したとはいえ、水準はまだ高い」という趣旨のコメントをみかけますが、企業や投資家が直面する景気認識は、低下ペース(トレンドからの下方乖離)の方が忠実であると考えられるため、水準を過度に重視するのは望ましくありません。 この尺度で計測した危険信号(トレンドから大きく下方乖離している指標の割合)は日経平均の変動を上手く説明できているようにみえます。安定した先行性こそ認められないものの、2015~16年、2018年の株価急落は危険信号が点灯した初期段階に発生していることが分かります。また2013~14、2017年にみられた一貫した株価上昇は、バリューエション(企業価値評価)面から疑問が投げかけられた(特に米国では割高感を指摘する声が多かった)反面、マクロ指標がそれを正当化していたことが分かります。またこうした認識に基づくと、この年末年始の株価急落が単なる投機筋の暴走ではなかったことも分かります。 現在、閾値をまたいでトレンドから下方乖離している指標は、(1)CB消費者信頼感指数、(2)Ifo企業景況感、(3)ドイツ製造業PMI新規受注、(4)中国製造業PMI新規受注、(5)台湾製造業PMI新規受注、(6)電気機械PMI――の6つです。また予備軍として米自動車販売台数、日本と韓国の製造業PMI新規受注などがあり、これら指標に警戒サインが灯れば、現在の株価反発はマクロ面から否定されることになります。株価は反発基調にありますが、再度の株価急落に注意が必要と思われます。
---------------------- ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。