JIGDRESS、超満員の下北沢DaisyBarでツアー終幕「俺たちずっとカッコいいから、これからもよろしく」
ここからJIGDRESSが持つ(実は)多彩な音楽性を体感できる時間が続いた。美しいギターフレーズから始まり、徐々に狂気を帯びていくように歪んでいく「Flicker」、悲しいまでに透き通ったバンドサウンドが鳴らされた「無重力透明」、どこか淡々としたボーカルが〈退廃的な快楽と腐ったベッドに溺れてたい〉という文学的とも言えるラインを描く「snap」、ヤマグチがビートを刻み続け、その間にメンバーがチューニング、そのまま繊細な音像を生み出してみせた「ORTHODOX」(間奏におけるメロディアスなベースラインも印象的)、痛み、寂しさ、悲しさが混ざり合う刹那的な感情を綴った「refill」。そして、個人的に最も心に残ったのは、「壊れるまえに」だった。シンプルに研ぎ澄まされたアンサンブル、憂いと光の両方を感じさせるメロディ、〈形を亡くした僕らは/夢が汚いゴミだとわかってる〉という歌詞。いつ壊れてもおかしくない、という危うさをまとったJIGDRESSの本質を射抜くようなこの曲のパフォーマンスは、この日のライブの静かなハイライトだったと思う。 「さっき話した“ソリッド島”の話、あれは結構本気です。アホなこと言うけど、みんなに普通にいい思いをしてほしい。俺らの共通項は音楽だけなんだから、その中でやるしかないわけであって。何がしたいかっていうと、俺らがやってることに反応してくれたみんなを連れて、もっと広いものを見たくて。タイアップとか一過性のものではなく、みんなでこのまま、もっと高いところから“ソリッド島”の住人として、すべてのロック業界を見てみようと思ってる。ついてこいよという気持ちもあるし、純粋に応援してほしいという気持ちも出てきて。俺たちずっとカッコいいから、これからもよろしく」 山崎なりの言葉で今後のビジョンを示した後は、「優しい音楽の暴力で締め括ろうと思います」と「ってか」からファスト・チューンを続けざまに放つ。パンキッシュな鋭さをたてた(決してメロコア的ではない)ナンバーを浴びたオーディエンスは、小刻みに体を揺らし、拳を突き上げる。音楽を介した不純物ゼロのコミュニケーションこそが、JIGDRESSのギグの核なのだという事実がはっきりと伝わってくる。本編ラストは「狂ってる」。天井に顔をくっつけるようにして叫びまくる山崎のパフォーマンスから目が離せない。 アンコールではまず、「ありがとうございます。マジでありがとうございます。高みに行くためには、ツイートとか、誰かと飲んだ、誰かにCDを渡したとかそういうことではなくて、曲を作ることだと思うんですよ。春にEPを出すので、よろしく。マジでいい曲できてるので」と山崎がコメントし、新曲の「wack」とライブアンセム「POP is DEAD」を演奏。そしてダブルアンコールは、本編でも演奏した「ってか」「生活費」「mother」。バンドメンバーとオーディエンスが“今できることはやりきった”という表情を浮かべる中、ライブは終了した。 アルバム『MINORENTROPY』のインタビュー(『PMC Vol.32』)で「好きなものを作ればいいと思うし、聴いてもらうために作るのをやめたんですよ。俺らはただ好きな音楽をやって、それをアクシデント的に誰かが見つけて。もしついてきてくれたらマジでありがとうだし、心の底から愛そうと思うんですけど」と語っていた山崎。まさにその言葉通りのステージを見せつけたJIGDRESSは間違いなく、最も信頼できるロックバンドのひとつだと思う。 2025年1月16日(木) には、往来イベント『after feedback vol.02』を下北沢BAEMENTBAR / THREEで開催。出演はJIGDRESS、ルサンチマン、SleepInside、超☆社会的サンダル、板歯目など。言葉の意味通りの“オルタナ”を牽引するJIGDRESS。今後のアクションにもぜひ注目してほしい。 Text:森朋之 <公演情報> JIGDRESS『ONE SHOT KILL』 11月27日(水) 東京・下北沢DaisyBar 【セットリスト】 01. taog 02. 瘡蓋 03. 生活費 04. bleach 05. Goat 06. nectar 07. plan 08. クソみたいな歌詞 09. Flicker 10. 無重力透明 11. snap 12. ORTHODOX 13. refill 14. 壊れるまえに 15. ってか 16. 5/0.6 17. AMEL 18. mother 19. 狂ってる EN1. wack EN2. POP is DEAD WEN1. ってか WEN2. 生活費 WEN3. mother <ライブ情報> 『JIGDRESS pre.「after feedback vol.02」』 2025年1月16日(木) 東京・下北沢BAEMENTBAR / THREE 開場17:30 / 開演18:00 出演:JIGDRESS、ルサンチマン、SleepInside、超☆社会的サンダル、板歯目、and more ※第二弾出演者は後日発表