記者クラブから姿を消した記者たち、自治体に危機感 「行政監視の意味も薄れている」 元テレビ記者が全国調査
自治体やスタートアップ企業の情報発信を支援する会社「Shireru」は、全国の自治体を対象に記者クラブの活用状況を尋ねたアンケート調査で「記者クラブがある」と回答した217自治体のうち、「この5年間でクラブを利用する記者が減っている」と感じる自治体が4割以上に上ったとの調査結果を発表した。 アメリカでは地元に新聞がない地域が「ニュース砂漠」と呼ばれ、社会課題として認識されつつある。日本でも近年、全国紙が経営難から地方の記者や取材拠点を減らしており、地域の情報発信や行政の監視活動について自治体側も危機感を抱いている状況がアンケートから明らかになった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●今回の調査で「記者クラブ」は「記者室」と同義
記者クラブの定義について、日本新聞協会は「公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される『取材・報道のための自主的な組織』」とし、「取材・報道のための組織である記者クラブとスペースとしての記者室は、別個のもの」と説明している。 ただ、今回のアンケートは自治体を対象にしたもので、記者クラブに関する理解にばらつきが生じる可能性があるため、調査結果の「記者クラブ」は「記者室」という程度の意味として捉えたほうがよいという点を最初に指摘しておく。
●93自治体が「5年前から記者が減った」
Shireruは今回、全国の都道府県と市町村の全1788自治体にアンケートを送付。780自治体から回答があった(回答率43.6%)。 アンケート結果によると、回答した780自治体のうち「記者クラブがある」と回答したのは217自治体(27.8%)だった。その多くが比較的都市部にあったり人口が多かったりする自治体だったという。 記者が記者室を利用する頻度を尋ねた質問では、217自治体のうち29自治体が「記者をみかけたことがほとんどない」、26自治体が「月に1日は記者がいる」と回答した。 一方、「常に記者が1人以上滞在している」と回答したのは55自治体で、その多くが都道府県庁や各都道府県の県庁所在地がある自治体だった。 また、217自治体のうちの93自治体(42.8%)が「5年前と比べて(記者室に)滞在する記者が減ったと感じている」と回答した。