西野七瀬が"受け"の芝居で魅せる女優としての懐の深さ!ゲーム『ポケモン』原案のドラマ「ポケットに冒険をつめこんで」
3月に俳優・山田裕貴との結婚を発表した西野七瀬。プライベートだけでなく、仕事面でも映画やドラマ、舞台、CMなど多方面で活躍しており、充実した女優道を歩んでいる。 【写真を見る】西野七瀬が広告代理店でクリエイターを目指す主人公の成長を好演 西野の女優としての経歴をひも解くと、乃木坂46としてデビューしてから2年目でドラマに出演し、6年目には初出演の映画で主演、7年目には連続ドラマの主演、2019年には日本中に考察ブームを巻き起こしたドラマ「あなたの番です」(日本テレビ系)でキーマンを演じるなど、主演から助演まで数々の役柄とポジションを担ってきた叩き上げの役者でもある。 この華々しい経歴の裏では、さまざまな役と向き合い、試行錯誤しながら作り上げていくという作業を作品の数だけ繰り返しており、一流の共演者やスタッフたちと切磋琢磨することで、着実に演技力を高めてきた。振り返ると可憐なキャラクターから力強いキャラクターまで、その幅たるや目を見張るほどに広がっている。そんな彼女の女優としての懐の深さが見られる作品が、2023年のドラマ「ポケットに冒険をつめこんで」だ。 同ドラマは、アニメやカードゲームなど幅広くメディアミックスを展開し、世界中の子供から大人まで幅広い人気を誇る「ポケットモンスター」をテーマにした初のオリジナルドラマ。クリエイターを目指して上京し、小さな広告代理店に転職した主人公・赤城まどか(西野)が、20年ぶりにプレイした『ポケットモンスター 赤』にヒントを得ながら、仕事を通して周りの人々を変え、自分自身も成長していく姿を描く。 西野は、個性豊かな同僚やクライアントと対峙しながら、時に力を合わせ、時にしのぎを削りながら、社会人として成長を遂げるまどかを熱演。どこにでもいる特徴の少ないキャラクターであるまどかの成長を、しっかりとグラデーションで見せている。そのポイントは、彼女の"受け"の芝居の素晴らしさにある。 映像作品はざっくり分けると、「破天荒でパワフルな主人公が、周りを巻き込みながら変えていくタイプ」と、「どこにでもいる"普通"の主人公が、個性豊かな周りの人々に影響を受けながら変わっていくタイプ」に二分される。同ドラマは後者のタイプで、主人公を演じる西野は周りのアクの強いキャラクターたちが仕掛けてくる芝居を"受ける"側。しかも、周りのキャラクターたちは"ポケモン"を模した特徴を持っており、言うなれば"ポケモントレーナー"がまどかで、他の登場人物たちが"ポケモン"という構成のため、周りのキャラクターたちに対して、驚いたり、怒ったり、呆れたり、悩んだり、嘆いたり、本音をぶつけたり、煽ったり、背中を押したり...と、さまざまな感情で"受けて"いる。 この感情表現の豊かさが圧巻。どれもオーバーに演じたり、あえて数の多さで勝負しているというのではなく、とにかく引き出しが多いのだ。相手の個性を消すことなく、七色の感情表現で"受ける"ことで情感溢れるシーンに仕上げており、女優としての懐の深さを感じさせる。そして、懐が深いからこそ、"受ける"側である主人公の成長を、しっかりとグラデーションで表すことができている。 演じることを色で表すなら、赤や青、黄色にオレンジ、場合によっては黒など、さまざまな個性を色付けていく作業だが、それらを"受け"られる白を演じられるというのは強い。有する色の数が多いのも役者として必要だが、白を有することも同じくらい大事で、その白のパターンの多さが役者の懐の深さなのだ。 "ポケモン"ファンなら"ポケモン"の特徴を落とし込んだストーリーに得も言われぬ喜びを感じるだろうし、"ポケモン"を通っていない人でも純粋に人間ドラマとして楽しめるエンターテインメント作品。その屋台骨を支える女優・西野七瀬の"受け"の芝居に注目していただきたい。 文=原田健
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