「社会正義より経済」のトランプに多くの共感、バイデンの「トランプ支持者はゴミ」発言で足をすくわれるハリス
■ 「経済こそが重要なのだ、愚か者」 インフレに痛撃されたのは、株価や不動産の資産インフレと高金利による利息収入でホクホク顔のハリス支持者でなく、クレジットカードの負債を膨らませた低所得のトランプ支持者。その人たちをバイデン氏は「ゴミ」呼ばわりしたと受け止められている。これでは勝ち目はない。 1992年大統領選で民主党候補ビル・クリントン氏を勝利に導いたスローガン「経済こそが重要なのだ、愚か者」は今に通じる。米紙ニューヨーク・タイムズの世論調査でも経済は最優先課題。有権者の大多数は現在の経済状況を「まあまあ」または「悪い」としか評価していない。 米下院歳入委員会のジェイソン・スミス委員長(共和党)は「バイデン、ハリス両氏の失敗した政策の亡霊が食料品店での支払いのたびに米国人を悩ませる。今日の物価は20.5%上昇し、家族が食卓に食べ物を並べ、衣服を着て、家に住むのが難しくなっている」と手厳しい。 インフレ率は43カ月連続で2%を上回り、実質賃金は3.4%減少した。金利は過去23年間で最高水準を記録、毎月の住宅ローン支払い額は1030ドル増え、91%も高くなった。クレジットカードの金利も過去30年以上で最高水準に達し、負債額は5四半期連続で1兆ドルを超える。
■ 食費や住宅費の高騰が有権者にのしかかる クレジットカード残高の11%近くが90日以上支払期日を過ぎている。個人の平均貯蓄率は2.6%下がり、過去1年間に延滞金を支払わなければならなくなった世帯は全体の37%。バイデン政権発足後、国内総生産(GDP)比で政府支出は6ポイント増の26.5%に膨れ上がる。 スミス委員長は「トランプ減税で米国人の実質所得は5000ドル増加した。600万人が貧困から抜け出し、雇用を創出する企業は海外移転を止めた。ハリス氏はトランプ減税を終わらせることを掲げている。インフレと高金利に慄く米国人にとって増税を意味する」と強調する。 バイデン氏の来年度予算案では今後10年間で約7兆ドルの新たな税収を見込んでおり、その主なターゲットは企業と高所得者だ。年率2.8%成長や4.1%の失業率という経済のプラス面より食費や住宅費の高騰というマイナス面が有権者の肩に重くのしかかる。 トランプ氏の公約の一つは「インフレに終止符を打ち、米国を再び手ごろな価格にする」ことだ。北極圏などの石油掘削を進め「米国を世界有数のエネルギー生産国にする」。中国からの輸入品には60%以上の関税をかけ「アウトソーシングをやめ、米国を製造大国にする」という。