出番がなかった選手たちの本音「誰もできないから」 それでも森保監督が招集する訳
もう1人DF長友佑都もベンチ外が続いているなかで、精神的支柱となって若手を牽引している。復帰した3月の北朝鮮戦で1度ベンチ入りしただけで、6月以降は6戦連続でベンチ外。だが、選手と首脳陣の間に入り、チームにとっての細かいケアを怠らない。特に9月はDF望月ヘンリー海輝、10月にFW大橋祐紀やDF関根大輝ら初招集組に対して一番に声をかける。1人になる時間がないようにイジってキャラクターを即座に見出し、チームに溶け込ませる。その時間は合流時点でわずか5分にも満たない。長友のおかげで初招集組はたった5分でチームに馴染むことができるのだ。 「まず誰もが(そのような役割を)できないからこそ、僕はここにいると思っていますね。もちろん選手として試合に出たい気持ちも強いし、サウジ戦は自分が本当にピッチに立ったかのように日の丸、君が代を聞いてるときに身震いしたというか、やってやるぞっていう気持ちになったんでね。ピッチに立ちたいという気持ちはもちろん強いですけど、ただ僕の目標は次のワールドカップにある。まずそのためにはチームが勝たなきゃいけないし、ワールドカップに出場しなきゃいけない。このチームを勝たせなきゃいけない。それはどんな役割であっても、と思っているんで、自分の目標や夢を叶えるためにも、今はどんな立場になってもチームのために戦いたいなと思います」 その決意はチームに伝染する。「佑都くんがあれだけやっている」という姿勢は、若手に下を向かせる暇もないほど奮い立たせる要因となっている。 長友の招集は森保監督がアジア杯以前から画策してきたことだった。若手を育てながらアジア杯の敗戦後、絶妙なタイミングでの招集だったと言える。そして、長友がいるからこそ“未来枠”の望月や関根、MF藤田譲瑠チマらパリ五輪世代も招集できる。指揮官自身は就任以降、“二軸”を持つ。「今の日本代表が勝つこと」と、「将来の日本代表が勝つこと」だ。招集メンバー、采配を含め、決断する時にはこの“二軸”を信念として持っているため、未来につながらないことはやらない。 W杯本番に向けて、大事な“幹”は築きつつある。ここからはさらに積み上げ。全員の力が必要なことは間違いない。
FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi