<スポーツライター藤原史郎の目>第93回選抜高校野球 広島新庄 戦力分析/上 右腕と左腕、トップクラス /広島
左腕王国と言われ、これまで甲子園に出場した4回はいずれも左腕がエースだった広島新庄。センバツ出場を決める参考となった昨秋の県大会、中国地区大会の全9試合に先発したのは背番号1の右腕・花田侑樹(2年)。「広島新庄の右腕も通用するところを見せたかった」と中国地区大会優勝後のインタビューで発した。日ごろはおとなしい右腕エースの言葉には、並々ならぬ決意がにじみ出ていた。 新チームになった時点ではエースが決まっていなかった。2018年のU15日本代表で国際大会での登板経験があり、一昨年の中国地区大会では「中国地区ナンバーワン左腕」と評価された秋山恭平(2年)もエース候補だった。花田が背番号1をつけたのは、秋山の出遅れ。花田は昨夏に甲子園で開かれた交流試合には故障で登板しておらず、秋にかける思いは人一倍。ライバルの調子が今一つ上がらなかった時期にしっかりとチャンスをものにした。 花田は、182センチの長身を生かして上手から投げ下ろす本格派。最速143キロの速球を軸に、スライダー、フォーク、カーブ、チェンジアップを投げるが、角度があるので、縦に変化する球が効果的だ。更にカーブでスピードに変化を持たせてタイミングを外す。県大会では全5試合に先発して4完投。自責点5で防御率1・14。準決勝、決勝は2日連続で完投し、スタミナも十分だ。中国地区大会でも全試合に先発して、23回2/3を投げ自責点6の防御率2・54と好結果を残した。 県大会では出番がなかったものの、中国地区大会で存在感を見せたのが秋山。準々決勝からの3試合にリリーフし、8回1/3を投げ、自責点1で防御率1・08。四球1と制球の良さと速いテンポの投球が目を引く。圧巻は六回からロングリリーフした準決勝。1点ビハインドの試合を、4イニング無失点に抑え、味方の逆転劇につなげた。170センチ、65キロと、投手としてはやや小柄だが、腕をしっかり振って投げる140キロに迫る速球はキレがあり、数字以上の速さを感じさせる。カーブやスライダー、チェンジアップと変化球を持つが効果的なのはカットボールとツーシーム。「小さな変化球があったら良いのでは」と高校に入ってから覚えた球がストレートと見分けにくく、速球狙いの打者を凡打に打ち取っている。 両投手の使い方について宇多村聡監督(34)は「花田は打者としても期待しているので、途中からのリリーフは難しい。試合前にしっかり投球練習してそのまま先発させるのがベスト」と、先発・花田、リリーフ・秋山を構想する。投手としての経験値が高く、初球からマックスの投球ができる秋山が、試合のポイントで登板するのはベストな配置であろう。さらに140キロ弱の速球に、変化球をうまく配する右腕・新開健音(2年)も県大会で2回2/3を無安打に抑え、中継ぎでの登板が期待される。左右の好投手を有する投手力は、全国でもトップクラスと言える。(敬称略)【スポーツライター藤原史郎】