東京・神田、広島風お好み焼き店ずらり 駅前徒歩圏に7店 会社員好む昭和の雰囲気が後押し
東京・神田が広島風お好み焼き店の一大拠点になりつつある。JR神田駅の徒歩圏内に7店がひしめく都内有数の集積ぶり。会社員が気軽に立ち寄れる「昭和感漂う飲食街」の雰囲気が後押ししているようだ。 神田駅から歩いて3分のお好み焼き店カープ東京支店は昼時、いつも鉄板を囲む会社員で満席になる。広島市東区に長く住んでいた井川一夫さん(61)は20年来の常連。テレワーク後の出社前に立ち寄ることもあり「本場の味。とにかくうまい」と笑顔で薦める。 来年開店30年のカープのほか、一帯にはBig―Pig(1994年開店)や、HIDE坊(2005年)なごみ(16年)NEKI(17年)が点在。昨年2月に開いたもみじ屋など新店もある。中区出身でカープの山岡康秀店長は「うちは駅からの近さと広さが決め手じゃった」と振り返る。 ただ、駅周辺の繁華街は都内に多い。なぜ神田なのか。複数の店は「サラリーマンがふらっと立ち寄る街の雰囲気」を重視して出店した。 神田にはカレーやラーメンなどB級グルメ店が目立つ。オタフクソース(広島市西区)の新本顕三WoodEgg(ウッドエッグ)お好み焼館長は、東京営業を20年近く担った経験から「昭和感漂う神田の繁華街と、肩肘張らず頰張れる広島風は相性が良い」とみる。広島風お好み焼き店が約200店ある都内で「ここまで集積するエリアはない」と指摘する。 さらに広島風は、肉類やカキなどの鉄板焼き料理を酒類と楽しむ人も多い。「夜で3千~4千円の平均単価も街の相場にマッチしている」と新本館長。神田と同じく都心の「サラリーマンの街」と呼ばれる新橋にも広島風お好み焼き店は多い。 街の特性が広島名物の店を引き寄せているとの声も。神田の歴史に詳しい千代田区観光協会の田熊清徳理事は「さまざまな担い手を受け入れている日本三大祭りの神田祭のように、よそ者に寛容な街の多様性も一因だろう」と説く。 新型コロナウイルス禍の20年12月に神田での5年余りの営業を終えた花子は22年10月、再出店した。金本法之店長は「飾らない神田の街は居心地が良い。各店で刺激し合い『お好みの街』のイメージを浸透させたい」と力を込める。
中国新聞社