石破内閣が64日で退陣した「羽田内閣」の二の舞になるリスク 森山裕幹事長続投は「剛腕・小沢一郎氏」を封じるためか?
今と似ている「30年前の政局」
このまま“少数与党”と“少数野党”による両すくみの状態が続きそうだというのだ。だが、かつてバラバラだった党が大同団結して多数派を形成した例はある。1993年に非自民、非共産の8党派が結集して成立させた細川護熙内閣だ。 「直前の衆院選では自民党が第1党になったものの、過半数は確保できなかったのは、今回とよく似た状況です。どの党が与党になるか不確定のまま、自民党を離党して新生党を旗揚げしていた小沢一郎氏が短期間で8党派の連立交渉をまとめあげ、自民党を38年ぶりに下野させることに成功しました」(同) もう一つが細川内閣の次に発足した羽田内閣を倒閣した村山内閣である。 「94年に自民党、日本社会党、新党さきがけの3党が結集して発足しました。羽田内閣は、細川政権の与党の枠組みを引き継ぎましたが、すぐに小沢一郎氏を中心とする政権運営に不満を持つ社会党やさきがけが連立離脱し、まさに今の石破内閣のような少数与党になってしまいました。この時、野党だった自民党内で社会党の抱き込みに動いたのが、竹下登元首相のような重鎮や、野中広務さん、森喜朗さん、亀井静香さんといった実力者たち。彼らのような寝技に強い政治家がいれば、このようなウルトラCを実現させることもできるのです。この結果、羽田内閣は64日間の短命に終わってしまいました」(同)
「剛腕」は再び動くのか
今の与野党に、細川政権や自社さ連立を実現させた時のような剛腕を発揮できる人材がいるのか。 「野党では小沢一郎さんくらいでしょうね。ただ小沢さんも長年、永田町で暗躍し続けるうちに敵を作りすぎた。前回の衆院選では18期目にして初めて選挙区で落選もしましたし、今は立民内で15人程度のグループの長に過ぎませんのでどこまで力を発揮できるものか…」(同) とはいえ、小沢氏は実際、二度も非自民政権樹立の立役者となった実績を持つ人物だ。自民党内には警戒する声も聞かれるという。 「民主党政権時代には野田内閣の倒閣に動いた過去がありますが、10数年ぶりに恩讐を超えて野田代表誕生の立役者となり、党内での存在感は増しています。国民民主党や共産党、れいわ新選組とのコネクションもあります」(自民若手議員) 自民党は野党の動きを牽制するために、森山氏のような老練な政治家を党の要である幹事長に据えておく必要があるわけだ。 「森山さんも79歳。小沢さんだってもう82歳です。考えてみれば、30年前の大政局を仕掛けた立役者たち、小沢さん、森喜朗さん、亀井静香さんはみんな50代の働き盛りでした。今の与野党の50代の政治家にそんな人が1人でもいるかと考えると、永田町の人材が小粒になったと慨歎せざるを得ません」(前出・ベテラン記者) まずは首班指名が大きな山場となりそうだが、再び「剛腕」は動くのか。 関連記事【「小沢一郎」が語る“細川連立政権”秘話 「自民党を否定しているんじゃない。一度、地に落ちて引き締め直せばいいんだ」】では、昨年、小沢氏がインタビューで語った30年前の政権交代について詳報している。 デイリー新潮編集部
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