古墳を模した墓地が人気 霊園を訪ねて知った令和のお墓事情/福岡県新宮町
さらに、現代のお墓事情について話を聞くと、家族のかたちや考え方の変化が、お墓のあり方にも深く影響していることが分かった。古墳形永久墓を見学するのは40~70歳代の人が多い。非婚や少子高齢化で、お墓を引き継ぐ人がいないケースが増え、のちの世代に墓守の負担をかけたくないと考える層が広がっているという。
お墓を引っ越す「改葬」や、更地に戻す「墓じまい」で問題が生じることも。親族間で意見が一致しなかったり、決断を急いで後悔したり、離檀料を巡ってお寺とのトラブルに発展する場合もあるようだ。 将来世代の負担やトラブルを避けるためにも、納骨後の管理の一切を霊園側に委ねる永久墓に目を向ける人が増えているらしい。
母親の墓参りに福津市から夫婦で訪れていた岩下守治さん(71)は、「墓じまいなどで子どもに迷惑をかけたくないから」と古墳形の墓を選んだ。亡き母が好きだった桜の木に囲まれていることも決め手になったそうで、「一人では寂しかろうと、私たち夫婦も横並びに購入しました」。
時代の要請に合わせ
前方後円墳の背後にある高台には、2022年に庭園型の樹木葬エリアを設けた。従来のどっしりした墓石ではなく、小さくて色彩豊かなプレート型の墓が並んでいる。 霊園によると、「先祖と一緒に」ではなく、「自分たち夫婦で」と小さなタイプの墓石を求める人が15年ほど前から増えているという。家名や名前のほか、墓石をキャンバスに見立て、イラストやメッセージを添えたものが多く見られた。
「ありがとう」をはじめ感謝を伝える墓石が並ぶ中、似顔絵やビールを描いたものも。みんなはどんなメッセージを残したのだろう――と、その言葉を選んだ背景を想像しながら霊園を散策する人もいるそうだ。 仏壇・墓石販売の大手「はせがわ」による2024年の実態調査によると、一般墓と永代供養墓の受注割合がこの3年で逆転したとのことだ。複数回答のアンケートで、墓を購入しようとする人の9割近くが樹木葬・納骨堂といった永代供養墓を検討しているのに対し、一般墓は5割弱という結果だった。
「従来の墓のかたちを残しながら、令和ならではの供養の場として、前方後円墳や樹木葬など、時代の要請に合わせた聖域のかたちを提案できれば」と霊園の担当者は話す。前方後円墳に続く第2弾も考えているといい、ピラミッド形や、お堀を備えた円墳の案も出ているそうだ。
読売新聞