ひとり勝ち「神戸ビーフ」 世界的人気で価格急騰 業界にひずみ 鹿児島産を「神戸」と偽装するケースも
■高級ステーキ店では「この旅の目的の一つ」 過去15年で今が最も外国人客が多い
こちらは神戸や京都で6店舗を展開する高級ステーキ店。 平日の午前11時ですが店内はほぼ満席で、20人以上の客のうち日本人は2人だけでした。 【インドネシアから来た客】「神戸ビーフを食べることがこの旅の目的の一つだったので、うれしい。(Q.高いと思わない?)私は払う価値があると思う。こんな肉、食べたことない」
アメリカから来たこの男性が食べたのは200グラム、3万5000円の超高級ステーキ。 【アメリカから来た客】「神戸ビーフは和牛のトップ。良いものとして、アメリカでもよく知られている。もしアメリカで食べようとすると300ドル、もしくはそれ以上は余裕で超える。でもここは、このフルコースで220ドルしか、かかっていない」 店の担当者によると、過去15年で今が最も外国人客が多いということです。
■食肉卸業者が立たされる厳しい立場「価格転嫁したくてもできない」
需要が急増する中で、厳しい状況にあるのが食肉卸業者です。 レストランやホテルなどを取引先に持ち、自社で神戸ビーフを使った食品も製造する山晃食品株式会社を取材しました。 肉の保管庫には…。 【仕入れ担当者】「こちらは全部、神戸ビーフになります。インバウンドの影響で、急にご注文いただく機会も増えてきて、競りでの仕入れ価格が、去年の6月ぐらいから、ぐんと上がった。せめぎあいですね」 仕入れ価格が高騰しても、飲食店などで提供する価格にはすぐに反映させることができないため、結果として卸業者の得る利益が少なくなっているというのです。 【山晃食品 上野治郎社長】「価格転嫁したくても、できない会社さんはたくさんあると思いますので。日々、私も悩んでいます。高値で落ち着いてくれれば、もうちょっと商品としては、扱いやすくなるんですけど、また上がったり下がったりすると、その都度、お客さまの対応、各レストランも対応は大変です」
専門家はこういった仕入れ値と販売価格のズレをなくすことが、今後の産地偽装などを生まないことにつながるのではないかと指摘します。 【新渡戸文化短期大学 食物栄養学科 山本謙治教授】「今回(偽装を)やってしまった企業というのは、中間にいる。(消費者への)販売業者は他にいる。本来高くなるはずのものは、付加価値を乗せて、高い値段で末端までもっていって。消費者も『高いものだから、ごちそうやね』という形で、買ってもらうのが本来のあるべき姿」 需要の急増と価格高騰の間で起きた神戸ビーフをめぐる歪み。 大切に守ってきたブランド食材を損ねる事態だけは、避けなければなりません。