【訂正】『わかっていても』横浜流星に“沼る”理由 日本版の年齢設定が強調する“背徳感”
『わかっていても』や『梨泰院(六本木)クラス』 日韓相互のリメイクからみる経済状況
日本も韓国もアジア人ながら、表現には個性が如実に出る。日本のドラマを韓国がリメイクした作品(『花より男子~Boys Over Flowers』『マザー~無償の愛~』『リーガル・ハイ』『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』など)もあれば、日本が韓国作品をリメイクした作品(『梨泰院クラス』(日本では『六本木クラス』)『ボイス』『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』『彼女はキレイだった』『シグナル』など)もあって、日韓文化交流が盛んである。そもそもソン・ガンが注目されたきっかけである『カノジョは嘘を愛しすぎてる』は日本の少女漫画の実写ドラマ化のリメイクである。ここでは彼は日本版で吉沢亮が演じた役を演じた。そしてソン・ガンの代表作になった『わかっていても』が今度は日本でリメイクされた。同じ原作でも印象が違うほうがどちらも観る楽しみがある。 『わかっていても』はラブストーリーにプラスして『梨泰院(六本木)クラス』のような群像劇感があるのだが、韓国版は美大生が集まって飲食する場面がとてもエネルギッシュだが日本版はおとなしい。しかしその騒々しさは、90年代の日本のトレンディドラマで登場人物が毎晩、たまり場で騒いでいる場面を思わせるものもある。この点においては、日本と韓国の経済成長の差が顕著に現れているのかもしれない。日本は戦後の高度成長、バブル期を過ぎ90年代以降の「失われた30年」があったが、韓国は着々と経済成長して、いまや日本を逆転する勢いである。 群像劇のパワーでいったら韓国版がストレートに強く、日本版はその分、各話で、美羽の同級生たちの視点にスイッチしていく変化球で楽しませてくれる。この点も中川龍太郎や藤井道人に意図を聞いてみたい。 いずれにしても、国力や文化の違いがあるとしても、違いのないのは、この物語で描かれる「わかっていても」光を感じたほうに向かってしまうという人間の本質的な部分である。パク・ジェオンも横浜流星も圧倒的に輝度が強い。彼らの肉体から放たされる生命力の強さが、ヒロインを、視聴者を捉えて離さない。そこだけは抗えない絶対的優位性なのだ。 ※記事初出時、本文に誤りがありました。以下訂正の上、お詫び申し上げます。(2024年12月27日12:03、リアルサウンド編集部) 誤:美羽(南沙良)が、香坂漣(横浜流星)の「生徒」だと表記していたこと 正:美羽と漣の関係は「助手と講師」
木俣冬