革ジャン、ジーンズ、エンジニア、バイク。原宿の“ミスター乱暴者”が静かに情熱を注ぐ、古き良きアメリカ──特集:2024年秋冬、新しいアメリカン・ファッション
原宿の老舗ヴィンテージショップ、「フェイクアルファ」の店長である澤田一誠さんは、業界では有名なヴィンテージマスター。ライダースやジーンズ、エンジニアをこよなく愛する男が思うアメリカンアイテムの魅力とは。 【写真の記事を読む】原宿の老舗ヴィンテージショップ、「フェイクアルファ」の店長である澤田一誠さんは、業界では有名なヴィンテージマスター。ライダースやジーンズ、エンジニアをこよなく愛する男が思うアメリカンアイテムの魅力とは。
ジェームズ・ディーンと乱暴者
澤田さんがファッションに興味を抱いた1980年、当時はDCブランドなどが人気を博していた。だが中学生の頃にジェームズ・ディーンに魅せられ、その後映画『The Wild One(乱暴者)』から影響を受けて以来、澤田さんのファッションはライダース、デニムパンツ、エンジニアをベースにしたアメカジの虜になったという。 「10代のはじめはアメリカ製の新品を買っていました。当時アメリカ製の服は憧れが眩しかったんです。初めて買ったのはリーバイス501とヘインズのTシャツ、あとはコンバースオールスター。その後、古いものに興味がわいたのですが、あの頃の古着屋は”知る人ぞ知る”場所にしかなかったので、とにかく足で探して、見つけたデニムを大事に穿いていました」 25年間乗り続けている相棒であるトライアンフは、イギリスを代表するオートバイメーカーだが、そこにはちゃんと理由がある。 「映画『乱暴者(The Wild One)』(1953)の影響ですね。車種も年式も違いますが、劇中でマーロン・ブランドが乗っていたことからずっと乗っています。トライアンフはもともとイギリスのバイクですが、戦後イギリスから大量に流れているんです。当時のアメリカではトライアンフが大人気でした」 最近のアメカジ人気は店頭に立っていても感じるという。 「デニム人気はもちろんですが、うちの店では一般的なアメカジとは違い、50sっぽいものが多いので、春夏だとハワイアンやボーリングシャツ、秋冬はレザーライダースが人気です。アメカジの中でも特徴的なデザインのものが多いですが、今シーズンは着こなしの中にウエスタンシャツやスラックス、フレアデニムなどを取り入れて、50sの雰囲気を出すスタイルがおすすめです」 澤田さんにとってアメリカンウェアやファッションの魅力はずばり、かっこいいから。 「これに尽きます。興味をもち始めてからずっと、自分の中では変わらずにあるものですね。アメリカ製のアイテムは、良い意味でラフな作りで、デザインや色使いも目新しくて、初めて手にした時は衝撃を受けました。特に自分が好きなジェームズ・ディーンや『乱暴者』は、当時流行っていた服にはない不良的な要素があって、しかもファッションだでなく、カルチャー的な部分までかっこよくて、知れば知るほどのめり込んでいきました。自分はずっとこのスタイルですが、これからもそれは変わりません」 そんな“アメリカ”に魅せられた澤田さんのマストアイテムを紹介する。 リーバイス501XX 初めて購入したというリーバイス501XXは1940年代のもの。19歳の時にアルバイトでお金を貯めて地元の大阪のショップで購入したという思い出の逸品。30インチ程度で、当時は10万円くらいだったいう。赤タブは片面仕様で、レザーパッチも残存した優良コンディション。サイズアウトしていまい今は穿くことはないが、思い出の品として大事に保管しているそう。 ショットの“ワンスター” ジーンズと同じく10代から好きというライダース。こちらのショットのジャケットは20年前に購入したもので、肩部分にあしらった1つの星型スタッズから通称“ワンスター”と呼ばれる。リボンタグをつけた50年代のもの。損傷が激しすぎるため、いまは着ていない。 チペワのエンジニアブーツ 50年代製のチペワのエンジニアブーツも、20年ほど前に購入したという。ソールとヒールが別でついていることから“セパレート”と呼ばれる古いブーツに見られる仕様。コーティングしたブラックが剥げ落ち、本来の革の色味である茶色の下地がうっすらと浮き出た独特のエイジングを見せている。 澤田一誠 フェイクアルファ 店長 大阪府出身。1996年にフェイクアルファに入社。フェイクアルファは、1940~50年代のヴィンテージの品揃えでは他の追随を許さない原宿の名店である。テレビ東京系『開運! なんでも鑑定団』では鑑定士も務める。
写真・笹井タカマサ 文・オオサワ系 編集・高杉賢太郎(GQ)