筋書きなき「宙づり国会」開幕 補正・規正法、少数与党に試練 立・国、主導権確保へ思惑交錯〔深層探訪〕
衆院で過半数を有する政党が不在の「宙づり国会」が28日開幕した。焦点は2024年度補正予算案や政治資金規正法再改正の行方だ。少数与党で臨む石破茂首相にとって、野党の協力なしに審議を乗り切るめどが立たず、政権運営に緊張感が漂う。野党間では主導権確保へ思惑が交錯。筋書きの見えない国会が始まった。 【ひと目でわかる】総合経済対策の概要~物価高に対応、「103万円」見直しも~ ◇試金石 「衆院選結果を踏まえ、より丁寧に各党の意見を聞き、国民に納得してもらえる結論を得たい」。首相は28日、首相官邸で記者団に対し、野党の協力取り付けに期待をにじませた。 与党が過半数を割り込んだのは1994年の羽田孜内閣にさかのぼる。社会党が連立を離脱し、その後内閣不信任決議案を突き付けられ総辞職。首相在任は64日だった。 衆院選大敗後、首相は羽田内閣の轍(てつ)を踏まぬよう対応してきた。周辺には「補正予算を通さねばならない」と話し、国民民主党が唱える「年収103万円の壁」見直しを総合経済対策に明記するなど取り込みを図った。政権幹部は、来年の通常国会での25年度予算案審議も見据え「今国会が政権運営の試金石となる」と語る。 ただ、今後の展開は見通せない。地方自治体からは壁見直しによる税収減への懸念が噴出。27日、政策要望のため首相官邸を訪れた国民民主の玉木雄一郎代表は税制改正をにらみ「トータルでは地方もプラスだ」と丸のみを迫ったが、「うーん」とうなった首相はあいまいな態度に終始した。 経済対策の裏付けとなる24年度補正予算案には能登半島への支援策なども含まれる。与党内では「国民民主のちゃぶ台返しは困難」との見方が強いが、支持団体の連合には「与党寄り」との不満も広がる。玉木氏には不倫問題で進退論も浮上するほか、衆院予算委員長には立憲民主党議員が就任。補正審議には不確定要素が残る。 ◇首相弱音も 自民派閥裏金事件に対する世論の反発は根強く、首相は今国会で政治資金規正法再改正に取り組む。ただ、会期は来月21日までと日程は窮屈だ。自民は法案策定前に、与野党7党による政治改革協議を26日に初開催したものの、立民や日本維新の会、共産各党などは企業・団体献金禁止を改めて要求。「悪との前提には立たない」とする自民との隔たりが際立った。 「やはり反省が足りない」。立民の野田佳彦代表は28日の党会合で、自民の姿勢を批判。立民が衆院委員長ポストを押さえる政治改革特別委員会への野党案提出を優先する考えも示した。 野党間でも来年の参院選を意識し、存在感を発揮しようとする思惑が絡み合う。立民、維新、共産などは27日、野党共同での規正法再改正案提出に向け協議したが、国民民主は欠席。呼びかけた立民は出ばなをくじかれた格好だ。 自民は28日、所属参院議員27人が政治倫理審査会出席を希望していると明らかにした。自民、立民両党は政倫審開催へ協議を始めたが、立民は「真相を明らかにするのが目的。みそぎを求めているなら筋違い」(斎藤嘉隆参院国対委員長)と早速けん制。共産からは衆院での証人喚問を含む対応を求める声も上がり、規正法改正の論議に影響する可能性がある。 首相は政治改革の「年内決着」を掲げるが、周辺には「臨時国会では難しいかもしれない」と漏らしたという。28日の記者団の取材には「必要であれば法案も成立させなければならない」と明らかにトーンダウンした。