人手不足の時代に人材関連サービス業の倒産が急増 ~中小の人材紹介会社は長い冬の到来か~
倒産件数の推移
2000年以降の職業紹介業の倒産(負債1,000万円以上)は、2015年の7件をピークに低水準で推移。2019年も4件にとどまった。コロナ禍で採用市場が縮小した2020年は12件と3倍に急増したが、2021年は採用市場が動き出し9件に減少。その後、深刻な人手不足が表面化すると、2022年は11件、2023年は16件と右肩上がりで増加し、2000年以降で最多を更新した。 一方、同じ人材関連サービスである労働者派遣業の倒産は、2019年は66件だった。コロナ禍の2020年は56件(前年比15.1%減)に減少。次いで、2021年は25件(同55.3%減)、2022年は55件(同120.9%増)と増え、2023年は78件(同141.8%増)と急増した。 2019年から2023年にかけての職業紹介業と労働者派遣業の倒産件数は、異なる推移をみせた。 これは新型コロナ感染拡大に伴う雇用調整助成金(雇調金)の存在が影響している。厚生労働省は派遣元事業者に対し、一定の要件での雇調金の特例措置を講じ、積極的な雇用維持を促した。派遣従業員の休業や契約終了は雇調金で一部守られ、派遣会社の倒産は抑制されたとみられる。これに対し、職業紹介業は、雇調金の支援がなく事業環境の悪化が経営を直撃した。
職業紹介業の倒産
2023年の職業紹介業の倒産は、小規模中心で、負債の最高は3月に破産した(株)ヒットビット(藤沢市)の約3億7,000万円だった。 ヒットビットは1969年に「湘南配膳人紹介所」として創業し、業歴54年を数える業界老舗だった。一時は約7,000名の登録スタッフを抱え、大手ホテルなどを対象に2011年6月期は売上高6億4,965万円をあげていた。 しかし、業界内の競争激化で売上はジリ貧をたどった。そこにコロナ禍に見舞われ、2020年10月で事業を停止した。 9月には(株)F2F(品川区)が、破産を申請した。医者や医療専門職の紹介を手がけていたが、売上高は3,000万円台と零細規模を抜け出せなかった。いずれも大手との競合で、候補者確保に苦戦を強いられた典型例だった。 ◇ ◇ ◇ 2023年に倒産した職業紹介業の16件のうち、資本金1,000万円以下は8社と半数を占めた。労働者派遣業は、厚労省の許可基準で基準資産額2,000万円以上と定められている。一方の有料職業紹介事業は、基準資産額は500万円以上で小規模事業者も参入しやすい。 深刻な人手不足は、人材関連サービス業も例外なく影響を受けている。大手より体力の劣る小規模事業者は、難航する人材獲得の目途が立たずに、倒産に追い込まれるだろう。これは産業構造の転換の兆しなのか、人手不足の副産物なのか。答えは早く出るのかも知れない。 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年1月31日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)