RIZINが“パッキャオ刺客問題”の説明不足を謝罪
RIZINの榊原信行実行委員長が20日、ボクシングの6階級王者、マニー・パッキャオ(40、フィリピン)の推薦選手として那須川天心(20、TARGET/Cygames)と「RIZIN.15」(21日、横浜アリーナ)のセミファイナルで対戦するフリッツ・ビアグタン(23、フィリピン)がパッキャオ自身と会ったこともなく“秘蔵っ子”でも何でもなかった問題について「説明不足が誤解を呼んだ。ファンの方々には、お詫びしたい」と謝罪。パッキャオと無縁のファイターが推薦選手になった経緯を説明した。パッキャオの手駒にキックボクサーや総合ファイターがいなかったため、パッキャオサイドの情報に沿ってRIZIN側がビアグタンに出場を打診、それをパッキャオが承諾する形で今回、推薦選手としての出場になったという。格闘技ファンが見たかったのは、パッキャオの薫陶、指導を受けた猛者と天心の激突だったが、失望感の残るマッチメイクになってしまった。
パッキャオが会ったこともない選手を推薦した理由とは?
都内のホテルで行われた公開計量に背広姿の“レジェンド”パッキャオが登場した。だが、自らが推薦したビアグタンが“弟子”でも“秘蔵っ子”でもないことをその挨拶で、また明らかにしてしまった。 「彼のMMAでの試合は初めて見る。楽しみにしている」 19日の出場選手インタビューで、ビアグタン自身が、パッキャオとは会ったことはおろか、何の縁もなく、突然、受けた推薦に対して「なぜかわからずに驚いている」と語ったことで“秘蔵っ子ではなかった”というショッキングな事実が判明。パッキャオが送り込んできた“刺客と天心の対決を楽しみにしていた格闘技ファンを失望させネット上でも騒ぎになった。 では、パッキャオは、なぜ会ったことも見たこともないファイターを推薦したのか。高まる疑念に対して、この日、榊原実行委員長は緊急会見を開き「パッキャオの推薦とお伝えしたが、弟子とも刺客とも言っていない。ただ、どういう形で推薦選手となったのかの前段が抜けていて、誤解を呼び、お叱りやご指摘を受けた。説明不足をお詫びしたい」と謝罪した上で、その経緯を説明した。 榊原実行委員長の説明によると、大晦日のメイウェザーvs天心戦の後にメイウェザーの関係者を通じてパッキャオとの“交渉チャンネル”が開き、当初、パッキャオと天心のスパ―リング、1月のブローナー戦に天心がセコンドに付くなどの交流計画が検討されていた。 だが、そのプランが流れ、パッキャオ自身をエキシビションでRIZINのリングに上げるところまで詰めることもできなかったため、パッキャオとのプロモーション協力契約の方向に切り替わった。 「フィリピンの若い選手をRIZINのリングに上げることに絡むことができたらいいよね、と広い意味での話し合いが進んだ。天心の相手をパッキャオが推薦して欲しいと提案した。あなたの弟子でもスパーパートナーでもいいと」(榊原実行委員長)。 当初、パッキャオはボクサーを推薦、ボクシングルールによる天心との対戦を求めてきたが、RIZIN側がキックルールを主張。パッキャオ側のネットワークの中に57、58キロクラスで戦えるキックボクサーやMMAファイターなどもおらず、キックルールで戦うことに手を上げるボクサーもいなかった。だが、パッキャオサイドから「フィリピンには90年代に活躍しフィリピンにムエタイを持ち込んだ有名なキックボクサーがいて彼に息子がいる」という情報が出てきたため、RIZIN側が、ビアグタンサイドに出場を打診。ビアグタンサイドが出場を快諾したため、それをパッキャオ側に折り返して資料などを送った上でパッキャオの推薦選手として出場させることの同意、承諾を得たというのが、今回の事の真相だという。 パッキャオは、直接、ビアグタンを知らないため、フィリピンで両者の対面機会を作ろうとしたが、タイミングが合わず「見たことも話したこともない選手をパッキャオが推薦する」というなんとも“間の抜けた”マッチメイクになってしまった。 「パッキャオは、自分がブリッジとなってフィリピンの若者が天心に対峙する機会を作りたいと考えていた。勝てるか、負けるかわからないが、フィリピンの若い人はこういうアングル(パッキャオの推薦選手)がなければ、RIZINに出ることはなかった。ビアグタンにすればフィリピーノドリーム。天心の正面に立って戦えるだけの実績はある」と、榊原実行委員長も苦しい弁明。 ボクシングルールによるエキシビションでない限り、パッキャオの持ち駒にキックボクサーもキックルールで戦えるボクサーもいないのだから、もう今後のプロモート協力の展開も難しくなりそうだが、榊原実行委員長は「他の階級や女子選手にバリエーションを広げれば猛者が上がってくる可能性はあるはずだし、最終的には、パッキャオ自身にエキシビションでRIZINのリングで試合をして欲しい」と力説した。 パッキャオは、明日、天心vsビアグタンの試合前にリング上で挨拶、推薦理由を語る予定。パッキャオのRIZIN登場は、違った意味で“ばずる”結果になったが、メイウェザー戦に続き、とんだ場外騒動に巻き込まれることになったのが天心である。この日の公開計量を58.95キロでクリア。カツラ、スカーフ、サングラスで“プチ”コスプレしてきたビアグタンから檀上で漫画「ドラゴンボール」の悟空の技で挑発された那須川は、同じく必殺技ポーズでやり返した。パッキャオの“秘蔵っ子”でもない選手と戦うはめになった、うっぷんや、一連の疑惑騒動は、天心の豪快な瞬殺KOで幕が下りそうである。