【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…9月第1週の「米国経済」の動き
不安定ながらも円高傾向が続く値動きのなか、「円安トレンド」の転換が予感される現在、「米ドル円」に対する世の中の関心はかつてないほどに高まっています。そこで、来週の米ドル円相場の動向に影響を与えそうな、先週の米国経済の動きについて、東京海上アセットマネジメントが解説します。 【画像】「30年間、毎月1ドルずつ」積み立て投資をすると…
個人消費に勢いも、貯蓄率は低下…消費の持続可能性に疑問符
⽶商務省が公表した2024年7⽉の個⼈⽀出(価格変動の影響を除いた実質ベース)は前⽉⽐+0.4%(6⽉︓同+0.3%)と、市場予想(同+0.3%)を上回りました(図表1)。 実質個⼈⽀出を四半期ベースでみると、2024年1~3⽉期の前期⽐+0.4%から4~6⽉期に同+0.7%へ加速し、7⽉は4~6⽉期(平均)を+0.8%上回る⽔準にあります。2024年⼊り後の個⼈消費の低調さは⼀時的なものにとどまり、⾜もとでは再び勢いを取り戻しています。 7⽉の実質可処分所得は、前⽉⽐+0.1%(6⽉︓同+0.1%)と⼩幅なプラスが続いています。四半期ベースでは、2024年1~3⽉期が前期⽐+0.3%、4~6⽉期が同+0.2%、7⽉の4~6⽉期対⽐が+0.3%と安定した伸びを⽰しているものの、実質個⼈⽀出の伸びを下回る状況が続いています。 可処分所得を上回るペースで消費を⾏った結果、7⽉の貯蓄率(貯蓄額÷可処分所得)は2.9%へ低下し、コロナ禍前の半分に満たない⽔準に低下しています(図表2)。 コロナ禍で積み上がった過剰貯蓄は、すでに取り崩されたとみられるものの、家計は貯蓄率の低下を許容してでも、⾼⽔準の消費を続けている状況にあります。 コロナ禍を経て、家計の貯蓄率に対する⽔準感が変わった可能性は否定できないものの、各種経済指標において、家計の消費者マインドが悪化している点や労働市場が減速している点などを踏まえると、消費の持続可能性に疑問を投げかける内容となっています。
住宅のインフレ率低下ペースも加速の可能性
消費を取り巻く環境を総合的に判断すれば、⽬先、個⼈消費は⼀定の減速局⾯を迎える可能性があります。2024年7⽉の⾷料品及びエネルギーを除いたコアPCE(個⼈消費⽀出) デフレーターは前年⽐+2.6% と、6⽉( 同+2.6%)から横ばいとなりました(図表3)。 内訳では、コア財(6⽉︓前年⽐▲0.9%→7⽉︓同▲0.5%)の下落幅が縮⼩したものの、コアサービス(6⽉︓前年⽐+3.8%→7⽉︓同+3.7%)は僅かながら伸びが鈍化しました。 コアサービスのうち、ウェイトの⾼い住宅サービス(住居家賃や帰属家賃)のインフレ率低下は依然として緩やかなものにとどまっているものの、新規契約物件の家賃を⽰すZillow家賃指数(前年⽐)は、コロナ禍前を下回る⽔準に低下していることから、住宅サービスのインフレ率低下ペースは、加速し始める可能性があります(図表4)。 物価の瞬間⾵速を⽰す前⽉⽐では、7⽉のコアPCEデフレーターは+0.16%(6⽉︓+0.16%)と、おおむね市場予想通りの結果となりました(図表5)。 FRBがインフレのモメンタムを測るうえで重視している3ヵ月前⽐年率値は+1.72%(6⽉︓+2.10%)と4ヵ月連続で伸びが減速したほか、6ヵ月前⽐年率値では+2.57%(6⽉︓+3.28%)と減速に転じており、物価⽬標である2%が視野に⼊りつつあります。 7⽉のコアPCEデフレーターは、引き続きインフレ圧⼒が和らいでいるとの⾒⽅を裏付けるものとなり、9⽉FOMCでの利下げ開始を正当化する結果といえます。もっとも、インフレ抑制に注⼒してきたFRBは、労働市場悪化のリスクも注視し始めていることから、インフレ動向がFRBの利下げ判断に及ぼす影響は⼤きくないと考えられます。 このため、市場の焦点である9⽉FOMCでの利下げ幅や、その後の利下げ時期については、8⽉の雇⽤統計(9/6公表)の結果に⼤きく左右されることになります。