【THRJ独占インタビュー】エミー賞・主演女優賞ノミネート、『SHOGUN 将軍』アンナ・サワイが語る「自分らしい役を演じる責任」とは
ハリウッドでの活動について
──── 次世代の日本人女性のために道を切り開いている姿に、多くの人々が感銘を受けていることでしょう。しかし、日本人女性としてハリウッドで活動する上で、ステレオタイプなどを含め、様々な課題があると思います。ご自身の経験はいかがですか?ハリウッドの業界に、ポジティブな変化を感じられるでしょうか? ハリウッドで活動を始めた当初は、自分にとってはとても幸せでした。というのも、それまでの環境では、多くの制限があり、自分のキャリアを自由に選択できなかったんです。なので、ハリウッドに来て、自由を得たときは本当に嬉しかったです。オーディションを受けるのも新鮮な経験でした。以前はその機会がなかったので。 ハリウッドは日本とはかなり違います。特に駆け出しのうちは、多くのことを自分でやらなければなりません。もちろん、今は私の希望を理解してくれる素晴らしいチームがいて、サポートされていると感じています。 でも最初は、マネージャーと密接にコミュニケーションを取る必要があります。どのオーディションを受けるか自分で決めますし、オーディションに行かない場合は短時間でテープを撮る必要があります。台詞を覚え、照明をセットし、背景を準備し、編集まで自分でこなさなくてはいけません。少なくとも、私の場合はそうでした。撮影現場では、迎えの時間をADに連絡するなど、多くのことを自分で管理しなければいけませんでした。日本の業界とは違い、常にマネージャーや付き添いがいるわけではありません。 ハリウッドでは、自分の努力量が、直接結果に反映されると感じます。事務所がプッシュしてくれたり、オーディションが必要なかったりする日本の業界とは全く異なります。慣れるまでに時間はかかりましたが、努力の分、やりがいも感じています。 ──── ハリウッドに何か前向きな変化を感じていますか? 確かに感じています。より多くの機会があると感じますし、スタジオも人種より才能に基づいて俳優をキャスティングすることにオープンになったと思います。もちろん、未だに忠実な表象だとは感じられない役もありますが、素晴らしい例も多くあります。 私は意識して「セクシーなアジア人教師」や「理由もなくただアクションをする女子学生」といった、ステレオタイプを助長するような役は避けるようにしています。固定観念的な誤った表象ではない、適切な役を選ぶことが大切だと考えています。 それはチームではなく、私自身が決断することです。私には、自分らしいと感じられる役を選び、何か違和感があれば声を上げる責任があると感じています。業界は前進していると感じますし、それと同時に、制作側と協力し合い、強い自己意識を持つことが重要だと思います。 ────『SHOGUN 将軍』で演じられた「鞠子様」は、誇りと信念を持っている、強くて独立した女性を体現していますね。このキャラクターを通じて日本の皆さんに伝えたい最も重要なメッセージは何ですか? 鞠子はこれまでの典型的な日本人女性の表象ではありませんよね。彼女は強くて、独立していて、自分を表現することを恐れません。 私自身も含めて、日本では、特に男性中心の環境で女性が声を上げられないと感じる状況が多くあるように思えます。鞠子という役を通じて、日本の女性たちに、自分らしくあることの大切さ、そして、たとえ言葉でなくても、自分の気持ちを表現して良いんだと気づいてほしいです。沈黙や、ほんのわずかな言葉で強力なメッセージを伝えることができると知ってほしい。 鞠子を見た女性が、「自分らしく生きよう」と勇気を得ることができたら嬉しいです。そして、環境や待遇に憤りを感じても良い、その憤りを発散しても良いのだと気づいてほしいです。 ──── 米『ハリウッドリポーター』の「THRラウンドテーブル」に他のハリウッド女優の方々と一緒に参加し、ハリウッドで働く日本人女性としての経験を語ってくださいましたね。業界で成功を収めている女性たちと経験を共有するのはいかがでしたか? とても緊張しました!「なんで私がここにいるんだろう」とずっと考えていたんです。でも、「THRラウンドテーブル」に参加して気づいたのは、どれだけ有名で経験豊富な人でも、似たような挑戦を経験しているということです。成功を収めたからといって、心配事がなくなるわけではありません。誰もが「自分のベストを尽くしたい」という思いを持って撮影現場に立っています。彼女たちがくれたアドバイスで、私は一人じゃないんだと感じました。もし話し相手が必要なら、いつでも彼女たちに助けを求めていいのだと気づかせてくれたんです。 ラウンドテーブルの撮影終了後、ニコール・キッドマンが私のところへ来て、私の肩に腕を回し、「あなたには私たちがついているからね」と言ってくれました。 討論中に「尊敬している人」をテーマに話していた時、私は特定の人物ではなく、撮影現場で出会う様々な人を見習っていると話しました。だから、ニコールがそう言ってくれたのは本当に意味のあることでした。 ブリー・ラーソンやジョディ・フォスターもいました。ジョディがみんなの話を熱心に聞いている姿を見て、素晴らしい女性たちに支えられていると感じましたし、私も他の女性を支えていきたいと強く思いました。私はキャリアを積んでいる途中で、まだそういう立場ではないかもしれません。でも、お互いをサポートし合うべきだと信じています。 ハリウッドにおける女性たちのコミュニティでは、お互いを支え合う必要があると思います。誰も一人ぼっちになるべきでないし、一人で乗り越えられるものでもありません。彼女たちから多くのことを学び、必要なときには助けを求めたいと思います。それと同時に、私もできる限り他の女性をサポートしていけたら嬉しいです。 ──── とても素敵なお話ですね。ハリウッドで活躍をする上で大きな人気が集まることや、忙しいスケジュールとプライベートとのバランスについて、どのように対応していますか? そんなに人気があるとは感じていません。まだ街を歩いても気づかれませんから。でも、私と仕事をしたいという関心が高まっているのは感じますし、インタビューの数も確実に増えています。その意味では、注目が集まっているのかなと思います。 もちろん、時には圧倒されることもあります。多くの人と会えば会うほど、自分を守る必要性を感じます。これほど多くの人と出会い、交流するのは中々普通なことではありませんから。なので、私はプライベートな生活を大切にしています。大学時代からの親しい友人たちや、私を支えてくれる家族の存在が、私の活動を後押ししてくれているんです。 また、様々な人と出会う機会があることにも本当に感謝しています。日本で活動をしていたときは、自分のキャリアをコントロールできなかった時期があったので、今の環境をより一層ありがたく感じています。自分のやりたいことをできなかった時期が何年もありました。今は忙しくても、感謝の気持ちを持ち続けていますし、これこそ常に望んでいたことだと自分に言い聞かせています。 今はオーストラリアで撮影中で、とても忙しくなるときもあります。翌日のスケジュールを前日の夜まで知らないことも多くて。でも、燃え尽きたと感じるほどではありませんし、あらゆる感情を仕事に活かすようにしています。ストレスを感じているときは、それをすべて受け入れて、演技につなげています。