監督が語る…映像化不可能と言われた『十角館の殺人』を映像化できた「3つの理由」
ミステリー界の巨匠・綾辻行人の作家デビュー作にして、最高傑作との呼び声も高い『十角館の殺人』 (講談社文庫) が、待望の実写映像化。Huluで独占配信中だ。 【写真】二十六歳『十角館の殺人』でデビューも、四作目は賛否両論「期待外れ」 全世界シリーズ累計670万部を誇る綾辻行人の大ベストセラー「館」シリーズ。その第1作『十角館の殺人』は、緻密かつ巧妙な叙述トリックで読者を引き込みながら、たった1行で事件の真相を描く大胆な手法で、ミステリー界に衝撃を与えた。 誕生から37年経った今も色褪せない世界的名著として輝きを放ち、長年「映像化不可能」と言われてきた本作。そのドラマ化に挑んだ制作陣と出演者たちに、このほどインタビューを敢行した。今回は本作で監督兼プロデューサーを務めた内片輝氏に本作にかけた思いを聞く。
悲願だった館シリーズの実写化
――『十角館の殺人』の実写化について内片監督は前々から考えていたとのこと。やはり特別な思い入れがあったんでしょうか? 内片:綾辻さんとは1999年に『安楽椅子探偵』シリーズが縁で、最初にお会いしたんですが、その頃から「いつか綾辻先生の小説作品の実写化をやりたい」とは思っていました。 『安楽椅子探偵』って、当時なかなか画期的な推理ドラマで。原案を綾辻さんと有栖川有栖さんが手掛けられ、出題編の翌週に解決編まで視聴者が犯人や動機を推理し、犯人を当てた人は賞金がもらえるという、2時間の視聴者参加型テレビドラマシリーズだったんですけど。 ――綾辻先生と20年以上のお付き合いがあるんですね。 内片:はい。ただ、「館」シリーズの中で仮に実写化できるとして、「どの作品を実写化するか?」という問題がずっとありました。内容的にも江南(かわみなみ)や島田の登場を考えたら、『十角館の殺人』は避けては通れないし、この作品に向き合わず、比較的映像化しやすい他の「館」シリーズから手をつけるのは、やはり違和感がある。 とはいえ、「『十角館の殺人』をいかにして映像化するか?」という問いに対する答えも、自分の中で明確にできないまま、年月が流れていきました。