被災者支援で「はたらくくるま」に仲間入り 全国の自治体で導入広がる水洗トイレカー
地震災害などで断水した際、被災地ではトイレが深刻な問題となる。元日に発生した能登半島地震では長期間の断水で水洗トイレが使えなくなり、不衛生な環境下で用を足さなければならない被災者の心身への悪影響が顕在化した。「救世主」となったのは、自治体などから派遣された水洗トイレカーだ。全エリアをカバーすることはできなかったものの衛生環境の改善に寄与し、導入に向けた動きはその後も各地で着実に広がっている。 【写真】兵庫県南あわじ市が所有するトイレカーの室内 ■車いすも使用可 「涙が出るほどうれしい」「トイレを我慢しなくて良くなったので気持ちが楽になった」「これなくしては、(支援)活動ができなかった」 兵庫県南あわじ市は1月7日、所有する自走式水洗トイレカーを石川県珠洲(すず)市に派遣した。医療従事者らが集まる拠点に配置したところ、被災者や医療従事者からこんな感謝の声が寄せられた。 車椅子の人やオストメイト(人工肛門、人工膀胱(ぼうこう)利用者)も使える仕様で計5室を備え、最大1千回程度の利用ができる。水洗と手洗い用の水は、近くにある川の水を浄化して使用。当初、汚物タンクが満杯になれば、トイレカーごと金沢市内の処理施設へ向かって廃棄することも想定されたが、石川県七尾市などの民間業者の処理用バキュームカーがくみ取り作業を行ったため、現地に置いたままで対応できた。 ただ、支援開始から約1カ月間は1日のうち2、3時間は使用禁止となる状態が続いた。午前中にバキュームカーがくみ取り作業を行って金沢市へ向かうが、午後にもう一度くみ取り作業を行って金沢市に向かうことが難しく、汚物タンクがいっぱいになってしまったためという。 現地に赴いた南あわじ市危機管理課の阿部志郎課長(53)は「当時は道路事情が悪く、暗い中でバキュームカーを走らせることが危険だったため」と説明。それでも被災者らのトイレ環境改善に大きく貢献し、現地での活用は5月末まで約5カ月間に及んだ。 ■維持費は「普通の車と同じ」