被災者支援で「はたらくくるま」に仲間入り 全国の自治体で導入広がる水洗トイレカー
南あわじ市がトイレカー1台を導入したのは、令和2年11月。発生が確実視される南海トラフ巨大地震に備えてのことだ。災害現場への投入は今回が初めてだった。
能登半島地震での活動が報道などで知られ、南あわじ市には30以上の自治体などから問い合わせが相次いだ。「仕様書を送ってほしい」「維持費はどれくらいなのか」…。関心の高かった維持費について、阿部課長は「普通の車と同じ。車検にかかる費用などです」と解説する。
各地で関心が高まる中、和歌山県みなべ町は、オストメイト対応可能で計5室を備えたトイレカーを今年度中に導入する方針を決めた。みなべ町も南あわじ市同様に海に面しており、南海トラフ巨大地震発生時に甚大な被害を受けることは必至だ。
町の担当者は、自分たちの地域以外に関しても「何らかの形で被災された所があれば、このトイレカーを持っていって役に立ちたい」と意気込む。
■相互派遣でより効率的に
「この『輪』を広げていく必要性がある」と力説するのは、すでにトイレカー3台を所有する愛媛県宇和島市の赤松芳和・危機管理課長(49)。同市は南あわじ市や長崎県島原市との間で各自が持つトイレカーの相互派遣に関する協定を結んでいる。
宇和島市は平成30年の西日本豪雨で災害関連死を含め13人が犠牲になったほか、浄水施設が大打撃を受け、約1カ月間は水洗トイレが使えなかった。その教訓から令和3年3月に3台を導入。うち2台はトイレルーム2室を備え、もう1台は1室だがオストメイト対応だ。
能登半島地震では、石川県輪島市に3台とも派遣した。赤松課長は「3台あっても大規模災害時にカバーできるエリアは限定的で、トイレ対策が十分とはいえない」と指摘。「全国各地の自治体が1台ずつ持って被災地に派遣しあえば、より効率的に衛生環境を守ることができる」と強調する。
牽引(けんいん)型の「トイレトレーラー」の導入を支援する一般社団法人「助けあいジャパン」(東京都)によると、現段階で全国22の自治体が導入済み。このほか、10以上の自治体が今後の導入を計画しているという。
珠洲市内では6月21日現在970戸が断水したままで、約20台が稼働。南あわじ市の阿部課長は「各自治体がトイレカーを導入し、相互に協力できる態勢を構築できれば」と期待している。(藤崎真生)