30人に1人しか合格しない…競争倍率日本一「東京藝大 油絵科」の信じられないほどシンプルな入試問題
東京藝大美術学部の絵画科油画専攻は競争率が高く、倍率30倍以上の年もあるという。アート・アンド・ロジック取締役社長の増村岳史さんの書籍『東京藝大美術学部 究極の思考』(クロスメディア・パブリッシング)より、東京藝大の入試についての解説をお届けする――。 【写真】増村岳史氏の著書『東京藝大美術学部 究極の思考』(クロスメディア・パブリッシング) ■倍率が30倍以上の年もある「東京藝大の油絵科」 東京藝大の油絵科(正式名称:絵画科油画専攻)は常に17~20倍、時には30倍以上の年もあるという、日本の大学の中で最も競争率が高い学科です。 ちなみに、競争率が高いといわれる早稲田大学でも6~7倍です。 この日本で最も狭き門をくぐり抜けて合格する人は、どのような人なのでしょうか? 合格者を偏差値的な属性で見ると40台から70台までとさまざまで、定量的なデータによってひと括りに測りづらい大学だといえます。 ■なぜユニークな学生が多いのか 一般の大学と比べると、入学するまでの経歴がユニークな人が多いのも特徴です。 紙幅の関係で、私が知っている油画専攻の藝大生・卒業生のうちの一部に限っても、次のようなユニークなプロフィールの方々が多々います。 ・高校卒業後に美容専門学校に行き、ヘアメイクのアシスタントの仕事を経て入学した人 ・高校卒業後にフリーターを経て肉体労働の職を数年したあとに絵を学びたくなり、入学した人 ・企業を早期退職した元メーカーエンジニアの人 ・女性の方で親から「女に教育などいらん、もし大学に行きたかったら東大か藝大であれば学費を払ってやる」と言われ、「なんとなく絵を描くほうが向いてる」と思い高校時代に絵を描き始めて入学した人 ・農業高校で花に興味を持ち、花の美しさに感銘を受けて入学を志した人
■多種多様な人々が集まる「究極のダイバーシティな場」 私の周りだけでもこれだけバラエティに富んでいるので、探せば「元○○」の藝大生はもっと多いはずです。 また、他の美術系の大学にいったんは入学しながらも、仮面浪人を経て入学する人が多いのも特徴です。 このように、一般の大学のように偏差値に基づいた定量的な基準がないため、多種多様な人々が集まる「究極のダイバーシティな場」というべき大学なのです。 では、どのような基準で、どのような試験を経て入学が許可されるのか? これについて興味を持たれる方も多いと思います。こちらはこのあと詳細を述べていきます。 ■8浪して入る学生もいる 一般の大学に比べると多浪生(2浪以上での合格者)の割合が高いのも、東京藝大の大きな特色といえるでしょう。 2020年の大学入試全体における現役合格率は77.6%となっている中で、東京藝大が発行している「大学案内2021」によると、美術学部の現役合格者比率はわずか22.5%です(参考までに、東京藝大の音楽学部の現役合格率は78.8%と、一般の大学入試の現役合格比率よりもやや高い数字)。 私が今まで出会った卒業生の中では、8浪されたという方がいました。 8浪、つまり小学校入学から中学2年生までと同じ年月を浪人生活に費やして合格を果たしたのです、驚嘆すべき事実ではありませんか。