レスリング熱湯かけ男は札付きのワルだった
レスリング世界選手権が14日までウズベキスタンのタシケントで開催中だが、一足先に日本のフリースタイルチームが帰国した。銀メダリストになった高谷惣亮が、準決勝を前にベラルーシのガイダロフにポットの熱湯をかけられたと明かしたことが話題になっている。おそらく3回戦で高谷に敗れたことへの腹いせをしたのだろうが、あまりに常識外れな傷害事件だ。ガイダロフは北京五輪銅メダリストで34歳のベテラン。強豪ではあるが乱暴者としても知られており、試合では顔面めがけてぶつかったり噛みつくなど、当たり前、五輪会場で場外乱闘を起こしたことさえある。 札付きの悪だ。 アテネ五輪の準々決勝で敗れたあと、マットを降り入退場口で対戦相手を待ち構え、殴りかかったのだ。異変はすぐに客席にも伝わり、観客席で場内警備に当たっていた係員も柵を跳び越えて止めにかかったことで、お互いにひとつずつ殴り合いその場は収束した。 このときガイダロフが殴りかかった相手は、同大会で金メダルを獲得したロシアのサイティエフ。その後、北京でも金メダルに輝き、その前に手にしていたアトランタと合わせて3大会で五輪金メダルを手にしたレスリング界の英雄だ。そのため、当時のニュースは「金メダリストのサイティエフが殴られた」または「レスリングで場外乱闘」というタイトルになっており、高谷に熱湯をかけた相手と同一人物だとニュースを読んで気づく人は少数派だろう。 IOCからも厳しく叱責されたこの場外乱闘への国際レスリング連盟による処分は「アテネ五輪失格」以外、あいまいなものに終わっている。五輪期間中は「厳しい処分を科す」とアナウンスしていたが、翌年4月の欧州選手権にガイダロフは出場しているのだ。 レスリングのルール違反どころか傷害事件である行為への処分が甘いのは、これだけではない。アテネ五輪の女子48kg級金メダリストであるウクライナのメルレニも乱暴なことで有名で、試合中に審判の死角を狙って相手の首を絞めるのは常套手段だった。2005年の世界選手権決勝では、決勝戦で中国選手の肩に歯形がしっかり残るほど強く噛みついている。誰がみても彼女が異常な反則行為をしたことは明らかだが、この件について審議された形跡はない。ちなみに翌年、メルレニは試合に出場していないが、それは2006年12月に息子を出産したからであって処分が下されたからではない。