売り手有利&早期化が進む就活戦線――“新卒採用の課題”は何か?
2025年3月卒業予定者(以下、25卒)の新卒採用市場では、売り手有利の状況や内定(内々定)出しなどの早期化がさらに進んだ。このトレンドは今後も続くと思われるが、昨年度(24卒採用)からの微妙な変化も伺える。各企業の採用担当者は26卒採用に向けて、25卒採用をどのように振り返っているのだろうか。例年、独自のアンケート調査*に基づき、『学生の就職活動総括』『企業の採用活動総括』を公表している株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースの高村太朗さん(同社・経営企画室長)のインタビューを通して、採用戦略のポイントと課題について考えてみる。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治) 【この記事の画像を見る】 * 株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース「2025卒 採用・就職活動の総括」 ● 学生の内定獲得数は過去最高の数字だったが… コロナ禍によって、25卒のほとんどの学生は大学生活がオンラインでスタートした。学部3年・4年生の頃はキャンパスライフが戻ったものの、1年・2年時の “三密回避”の影響で、先輩や友人との交流が思うようにいかず、就活への戸惑いもあったにちがいない。しかし、データを見ると、“結果”はそれほど悪くないようだが……。 高村 2024年7月調査時点での25卒の内定社数(内定を得た企業数)は1人平均3.15社となり、これは過去15年で最高となりました。一方で、エントリー数は38.9社、説明会参加社数は19.8社、受験社数は14.9社とやや減少傾向でした。企業の広報期間(選考開始までの日数)が短くなってきていることもありますが、学生にとっては、エントリーや説明会の参加にそれほど注力しなくても、内定を取れるようになっているとも言えるでしょう。ここ数年を振り返ってみると、コロナ禍でも内定社数にさほど大きな落ち込みはなく、 “売り手有利”がいっそう進んでいる印象です。 “売り手有利”という情報が目立ち、学生には“就活に対する熱量の低下”も生じているように思われるが、実際はどうなのだろうか? 高村 「就職活動に臨む」のは、それぞれの学生にとっては基本的に初めての経験です。なかには、 “お祈りメール”で「就活うつ」になるといったケースもあり、学生全体の意識面においては、例年と大きな違いはないと思います。 ただ、「就活の風景」は以前から様変わりしています。会社説明会が、その典型です。かつてのように、人気企業が行う説明会は申込み開始となった瞬間にボタンを押さないと参加できなかったり、会場を埋めたリクルートスーツの学生が人事担当者の言葉を一斉にメモするといった姿はほとんど見られません。いまは説明会の多くがオンライン化していて、ほぼ無条件に参加できます。オンラインなので他のことをしながらだったり、録画なら倍速再生したりするのも可能です。学生によって、就活にスイッチの入るタイミングがばらついているようです。 高村太朗 Taro TAKAMURA 株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース 経営企画室 室長 1998年、株式会社ダイヤモンド・ビッグ社入社。法人営業として、首都圏と大阪で大手企業を中心に新卒採用支援や人材開発支援を担当。「ダイヤモンド就活ナビ」編集長、営業企画室長を経て、現職。「ダイヤモンド就職人気企業ランキング」「採用・就職活動の総括」をはじめ、新卒採用マーケットに関する調査・分析に携わっている。