人材確保のため給与を上げる→人件費高騰で「倒産の危機」につながることも…そうなる前にやるべき「3つの対策」【経営コンサルタントが解説】
2.「業務棚卸」でやるべき仕事を絞り込む(ABC分類)
人件費の高騰を抑制する策として、業務の絞り込みが有効です。平たく言えば、自社でやるべきこととやらないことを仕分けすることです。今時、雑務を外注でやってくれる会社は山ほどあります。フリーランスで外注を受ける人もいますよね。 ですが、「自社でやらなくていい業務を外に出そう」というと、ベテラン社員ほど抵抗します。彼らの言い分は「自分にしかこの仕事はできません」です。果たして本当でしょうか? この言い分を鵜呑みにしていると、人は増えるばかりです。 こういった組織こそ「業務棚卸」をおすすめします。手順は以下の通りです。 <業務棚卸の手順> その(1) 業務をすべて書き出す ポストイットに自分が行っているすべての仕事を書き出す。 その(2) 業務をABC分類する ポストイットに書き出した業務をA.B.Cに分類する。 A:自分にしかできない専門業務 B:選択肢があれば素人でもできるマニュアル仕事(マニュアルがなければ作る) C:素人でもできる雑務(外注化ORアルバイト化する) こう仕訳していくと、面白いことにどの職種でもおよそAが1割、B+Cが9割となります。つまり、9割の仕事はマニュアルさえあれば誰でもできるのです。こうしてBの仕事はマニュアルを作り、Cの仕事はアルバイトさんもしくは外注さんに任せます。 これにより、社員のスキルをAの重要な専門業務に集中でき、少ない人員で高いパフォーマンスを出すことができます。
3.「業務分解」で女性・シニア・外国人を登用する
人口統計を見れば明らかですが、30代~50代の男性の働き手が少ないのに対し、同年代の女性、そして65歳以上のシニアの労働力はまだ余裕があります。さらに言えば、外国人の若年労働者は今後まだまだ流入してきます。 ここに目をつけて、労働力不足を補っている事例があります。埼玉県にあるガソリンスタンド特約店では、それまで99%が男性社員でした。しかし、ご多分に漏れず社員が確保できず社長は困っていました。 そこで、「うちでも女性とシニアを採用できないか」と考え始めました。しかし、車検を中心に行っているこの特約店の現場からは、「女性やシニアでは私たちの仕事はできませんよ」と反発の声が上がります。 社長は考えました。本当に女性やシニアは車検の仕事はできないのだろうか?と。社長は車検の仕事を一度分解してみることにしました。 車検の仕事は、(1)車検ステッカーを見て車検のおすすめ、(2)車検の提案、(3)車検の見積、(4)整備、(5)納品となります。 こうして見てみると、確かに(3)と(4)は重労働で整備力のある男性社員が行った方が有利です。しかし、(1)、(2)、(5)は体力のない女性でも実施可能です。そこで、車検を1つの仕事ではなく役割分担することで、女性でも活躍できる環境を整えることに成功しました。 その結果、この特約店は、高卒の女性も含めて、現在では社員の4割が女性社員となって活躍しています。同業務をマニュアル化することで、シニアや外国人の採用もできるようになってきました。