「ブラックアウト」の脅威まざまざ 東京都がEV普及に取り組む理由
東京都の小池百合子都知事は先月、「朝日地球会議2018」に出席し、その場で、環境に優しいとされる電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)といった次世代エネルギー自動車の購入補助を拡大させることを表明しました。 【動画】復活したEVスーパーセブン、東北の被災地を巡る「給電の旅」スタート すでにフランスやイギリスなどは、2040年以降のガソリン車の製造・販売を禁止する目標を決めました。ヨーロッパ諸国では、脱ガソリン車の動きが鮮明になっているのです。
EVや燃料電池車普及を進める東京都
日本で本格的にガソリン車を規制する動きは見られませんが、EVなどのいわゆるエコカーは少しずつ普及しています。 小池知事が表明したEVやPHVもさることながら、東京都は2014年の舛添要一都知事時代から水素社会の推進に取り組んでいます。特に、燃料電池車(FCV)の普及に積極的に努めてきました。 「水素社会とは平たく言ってしまえば、環境負荷を減らしつつ、生活に欠かせない電気を調達する社会システムのことを言います。2014年以降、都は交通局にFCバス(燃料電池バス)を導入し、都バスとして運行してきました。これが水素社会の実現に向けた取り組みの第一歩ですが、そのほかにも2016年には江東区の潮見に水素情報館「東京スイソミル」をオープンさせて啓発も進めています」と話すのは、東京都環境局地球環境エネルギー部次世代エネルギー推進課の担当者です。
非常時のバックアップ電源に
都が水素社会を推進する理由の一つに、環境に優しいことが挙げられます。しかし、環境に優しいという理由のほかにも、水素社会に取り組む積極的な理由があります。 それは、非常時におけるバックアップ電源を確保するという名目です。 9月3日に北海道胆振地方を震源として起きた北海道地震では、道内全域が停電に見舞われる、いわゆる「ブラックアウト」を引き起こしました。ブラックアウトは日常生活に支障をきたし、企業活動に影響を与えます。ブラックアウトが起きたのは北海道内ですが、物流や経済面で東日本全域に混乱をもたらしました。 ブラックアウトを起こさないための手段として、非常時に外部電源として活用できるEVやFCVに注目が集まっているのです。EVは40台で病院1日分、10台でコンビニ1日分の給電能力を有します。FCVなら8台で病院1日分、2台でコンビニ1日分の電力を賄えます。 「FCバスの給電能力はそれらを上回り、2台で病院1日分、0.5台でコンビニ1日分の電力を賄えるのです」(同) 非常事に備えるべく、都はFCバスの普及や水素ステーションの整備に力を入れてきました。今年4月、江東区内にFCバス用の水素ステーションが開設され、東京都と江東区は災害時に移動式非常用電源として避難所で使用する協定を締結しました。