「ブラックアウト」の脅威まざまざ 東京都がEV普及に取り組む理由
進まない水素ステーション整備
しかし、バックアップ電源として有用なFCVですが、肝心の水素ステーションの整備が進んでいません。 「現在、都内には14か所の水素ステーションがありますが、そのうちFCバス用の水素ステーションは江東区の1か所のみです。都内全域をカバーできる数には至っていません」(同) 水素ステーションが増えない理由は、水素を扱う事業者が少ないこと、水素ステーションの運営で採算をとることが難しいことなどが挙げられます。そして、もっとも大きなネックになっているのが、ステーション用地の確保です。 「一般的に、水素ステーションは700~800平方メートルの用地を必要とします。FCバスの水素ステーションに至っては、1500平方メートルもの広大な敷地が必要です。都内で、それほど広大な敷地を確保するのは難しいのです。東京都は水素社会を推進するため、このほど江戸川区内の葛西水再生センターの一画を水素ステーション事業者に貸し出すことを決めました」(同) 水素社会への取り組みを加速する都は、2020年までにFCバスを70台、FCバス用の水素ステーションを3~4か所まで増やすことを目標にしています。一方、水素ステーションは高圧ガスを使うことから安全面で厳しい基準が設けられています。そうした観点から、既存のガソリンスタンドと水素ステーションの併設はハードルが高く、それが水素ステーションを開設する障壁になっているという指摘もあります。 ひとたび水素ステーションで事故が起きれば、大きな被害が予想されます。安全を軽視するわけにはいきませんが、水素社会を実現するために都は規制緩和を政府に働きかけ、経済産業省や国土交通省は規制緩和の検討について議論しています。 (小川裕夫/フリーランスライター)