環境政策リードを自負ー個人も対象、都がグリーンボンド再発行する理由とは
地方自治体は、さまざまな債券を発行して資金を調達しています。そうした中、近年になって注目されているのが、グリーンボンドと呼ばれる環境に配慮した事業に充てられる債券です。 今般、金融業界ではESG投資と呼ばれる機運が高まっています。ESG投資とはE:環境=Environment、S:社会=Social、G:企業統治=Governanceの頭文字を取ったものです。ESG投資では企業の経営状態だけではなく、環境保全の改善や労働者保護といった社会的責任も含めた評価が影響してきます。 株式と同様に、市場から資金を調達する債券もESG投資の潮流を無視することはできません。しかし、グリーンボンドの発行には、さまざまな手続きが必要になります。そのため、ほかの資金調達手段に比べて手間や時間がかかるといわれます。
個人投資家にも対象拡大
「小池百合子都知事は環境大臣の経験もあり、環境政策には高い関心を持っています。そのため、都知事に就任してからも環境政策には力を入れてきました。グリーンボンド発行も小池都知事の環境政策に対する強い後押しがあったからです」と話すのは、都財務局主計部公債課の担当者です。 「水質汚染や大気汚染、緑化といった環境改善は短期間では達成できません。長い目で見て取り組む必要があります。永続的に環境政策をおこなうべく、都はグリーンボンドを発行し、その財源を確保することにしたのです」(同)。 昨年にグリーンボンドのトライアル版「東京都サポーター債」を発行した都は、今年10月には機関投資家向けにグリーンボンドを発行しています。 グリーンボンドの政策メニューは環境改善・省エネといった抽象的なものが多く並びますが、移転作業が進められている都公文書館のZEB化(ゼロ・エネルギービルディング化)など、実施例も出始めています。 こうした経験を基にして、個人投資家にも対象を広げた東京グリーンボンドを発行することを決めました。そこには、都が環境政策をリードするという強い自負も込められています。