このままじゃ親子共倒れだ…。65歳元会社員、“年金増額計画”で余裕の老後を確信も、状況を一変させた「老母からの電話」【FPの助言】
子どもが巣立ち、あとは夫婦2人で長い老後をどう生きていくか考えるだけ。そう思って老後資金の計画を立てたものの、想定外の事態が発生しその計画が崩れてしまった……。こんなケースは少なくありません。長寿化が進む日本では、自分の年金生活と親の介護生活が同時に訪れることも想定しておかなければなりません。今回は、年金繰下げを決めて「老後は安泰」と安心していた佐藤さん夫婦に訪れた危機を例に、南真理FPがアドバイスを交えて解説します。 【早見表】年金に頼らず「1人で120歳まで生きる」ための貯蓄額
老後の資金計画が固まった矢先、母の介護が必要という事態に
佐藤博さん(仮名・65歳)は、高校卒業から勤めてきた会社を数ヵ月前に退職しました。同じ年の妻・典子さんと2人暮らしで、子ども2人はすでに独立しています。 65歳からの年金は、佐藤さんが年170万円、妻が年81万円で世帯合計250万円。手取りにすると230万円、月19万円を受け取れる予定だと通知を受けていました。夫婦2人とも、通常であればすでに年金受給はスタートしています。しかし、佐藤さん夫婦は年金をまだ受け取っていません。 話は1年ほど前にさかのぼります。会社員時代の年収は決して高くなく、子どもの教育費や住宅ローンにお金が必要だったため、貯蓄も多くはありません。老後に不安を感じた佐藤さん夫婦は、ファイナンシャルプランナー(以下、FP)に相談することにしました。そして、年金の繰下げをすれば年金を増やすことができるという話を聞いたのです。 人当たりがいい佐藤さんには友人が多く、高い収入を求めなければ65歳を過ぎても雇ってくれるパート先は見つけられそうでした。妻のパート先も70歳まで働くことを歓迎してくれる状況だったといいます。そこで、元気なうちは夫婦で働き、年金を繰下げて長い老後に備えようと決めました。そのため65歳になっても年金を受給していない状況だったわけです。 しかし、近所に住む佐藤さんの母からの1本の電話で状況は一変しました。88歳になる母は足腰もしっかりしており、父亡き後も一人暮らしをしていました。しかし、玄関でうっかり転んでしまい、やっとのことで電話をしたというのです。病院で状況を確認したところ足や背中を骨折しており、寝たきりまではいかないものの、今後は介護が必要になると告げられました。 佐藤さんは一人っ子なので、母の面倒を見るのは自分たち夫婦しかいません。さらに母はいいづらそうに、「実はお金にあまり余裕がなくて…。介護になったらたくさんお金がかかるだろうか。どうしたらいいんだろう」と告げました。実は、年金だけでは足りないお金を貯蓄でカバーするという生活が長年続いた結果、母の家計には余裕がなくなっていたというのです。 5年間の年金繰下げは自分たちが働く前提だったので、介護をするとなればその計画にも影響が出ます。当然、介護費用も必要です。こうして、「年金繰下げで老後は安泰」と思っていた佐藤さんは、ライフプランの見直しを迫られることになったのです。
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