マンガ家・鶴谷香央理さんの「いま人に薦めたい愛読マンガ」6作「虚構と現実の解像度の高さに歓喜」
人生で思わず夜ふかしして読んでしまったマンガは?
◆『残酷な神が支配する』萩尾望都/小学館 アメリカとイギリス、その近郊を舞台に、性的虐待、近親相姦、同性愛、ドラッグ、トラウマ……。社会が抱えるさまざまな問題を、主人公ジェルミ・バトラー一家の性的な確執を軸に描いたサイコ・サスペンス。 「何度見てもこのタイトルには震えてしまう。初読のとき、読み進めるうちに、自分にはこの登場人物たちの人生に関わってしまった責任があると感じ、途中で止めることができなかった。『ある悲しみの話をしようと思う』という静かな始まりが、読み進めるにつれ重みを増しながら迫ってくるのを、夜がふけ、明けていくのと一緒に読んだことは忘れがたい」
鶴谷香央理さんの「マンガを読むときのマイルール」
「スマホを使って電子書籍でマンガを読むことが多くなってから、集中が途切れやすくなり、読むための場所(喫茶店や別の街など)に行って、新鮮な環境に頼って読むことが増えました」
いま、最も注目している新人作家とその作品は?
◆『遠い日の陽』『富めるひと』ともに横谷加奈子/講談社 ※単行本未発売。コミックDAYSで配信中。 『遠い日の陽』は、写真売買から始まる、令和的奇譚。「モーニング月例賞2023年9月期」入選受賞作。『富めるひと』は、9歳のときに宝くじに救われた主人公の10年後を描く、お金と友情と労働の物語。 「横谷さんの作品に漂う淋しさと孤独は、甘さを伴っている。心細い人間が生きている世界は道や建物、景色さえ淋しく、また愛しいものであると伝わってくる。そんな中、独特な設定で描かれる他者とのつながりには、めでたしではない本当の救いがある気がする。そして結局は、いつまでも横谷作品の淋しさの中にいたくなってしまうのだ」 マンガ家 鶴谷香央理(つるたに・かおり)さん 「おおきな台所」でデビューし、第52回ちばてつや賞準大賞を受賞。『メタモルフォーゼの縁側』(KADOKAWA)でも多くの賞を受賞。 発表! CREA夜ふかしマンガ大賞2024 眠りにつく前のひとときに、日中のあれこれを忘れさせ、新しい世界に連れ出してくれる力のあるマンガを称える「CREA夜ふかしマンガ大賞」。昨年からはじまった一般読者による投票を一次選考として、200作品以上が候補にあがるなか、2024年のナンバーワンが決定しました。
大嶋律子(Giraffe)