予想を超えた北朝鮮とロシアの「準軍事同盟」、米韓両国で噴きあがりはじめた「韓国核武装論」
「第4条は疑う余地のない有事の際の自動軍事介入条項だ。ロシアの韓半島戦争介入、北朝鮮のウクライナ戦争介入の可能性をすべて開いた条項と解釈できる。ただし、ロシア・ウクライナ戦争以降続いている北朝鮮の砲弾などの武器支援を、今後より制度化するための法的基礎を設け、適切な同盟関係を構築するためには、第4条の実行を具体化するアクションプランが必要になると思われ、少なくない時間がかかることもありうる」(イム・ウルチュル慶南大学極東問題研究所教授) ■ 核武装論が沸騰 ロ朝の「包括的戦略的パートナーシップ」締結を機に、朝鮮半島のパワーバランスに変化の兆しが見え始めると、韓国の安保専門家の間で独自の核武装を主張する声が大きくなっている。 今年の米国大統領選挙で「アメリカファースト」を主張するドナルド・トランプ前大統領が勝利すれば、「在韓米軍の削減または撤収」「韓米合同訓練の縮小」などの政策が推進され、米国に全面的に依存している韓国の安保は大きく揺らぐことになるからだ。このような状況で北朝鮮とロシアが密着を深めているのだから、韓国で独自の核武装論が台頭するのも無理のないことだ。 韓国の国家情報院傘下の「国家安保戦略研究院」は、「(ロ朝協定締結を契機に)独自の核武装または潜在的核能力の具備など多様な代案に対する政府レベルの検討および戦略的公論化を推進しなければならない」と主張した。 独自の核武装論を主張し続けてきた世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)韓半島戦略センター長も、「ロ朝の『包括的戦略的パートナー関係条約』締結を機に、冷戦時代のロ朝軍事同盟関係が完全に復元された」といいながら、「このような状況で、米国の核の傘にほぼ全面的に依存する現在の安保政策は、根本的に再検討される必要がある」とし、韓国独自の核保有の必要性を改めて強調した。
『朝鮮日報』などの保守系メディアでは、米国の戦術核を韓国に再配置すべきだという主張も出ている。 ■ アメリカからも「韓国核武装論」 一方、米国でも、ロ朝協定を機に韓国の核保有を容認すべきだという主張が出ている。 トランプ政権で朝鮮半島政策の実務を担当したアリソン・フッカー(Allison Hooker)元ホワイトハウス国家安保会議(NSC)アジア担当上級補佐官は、「北朝鮮とロシアの軍事同盟関係の復元が韓国の独自の核武装を推進する動因になり得る」とし、「韓国は独自の核武装に向かって進み続けており、もしかしたらもっと速い速度で進むという事実を排除できない」と述べた。 安保シンクタンクの「ケイトー研究所」(Cato Institute)のダグ・バンドウ(Doug Bandow)上級研究員も、外交専門誌「フォーリンポリシー」に掲載した寄稿文で、「米国の対北朝鮮政策は失敗した」とし、「韓国独自の核兵器開発を『“次悪”の選択』として受け入れなければならない」と明らかにした。 朝鮮半島の周辺には、世界1位の核弾頭保有国であるロシア(5580発と推定)と2030年までに1000発の核弾頭保有を宣言した中国、そして事実上の核保有国である北朝鮮(50発と推定)が布陣しており、このうち、ロシアと北朝鮮は「有事の際、相互自動介入」という軍事同盟に準ずる協定を締結した。 ここに韓国でも核保有の主張が力を得ていて、91年に撤収された在韓米軍基地内の戦術核を再配置しなければならないという主張も出ている。 朝鮮半島全体が時々刻々と核武装の泥沼に陥りつつある。
李 正宣