千葉「正論」懇話会 河合雅司氏講演詳報「人口減を前提に、戦略的縮小を」
企業経営はこうした変化を踏まえてマーケットに対応することが問われる。量的拡大の成長モデルは終わりだ。戦略的縮小によって「質的成長」に切り替えることである。
それには、高付加価値の商品を生み出し続け、従業員1人当たりの生産性を向上させる必要がある。一人一人の稼ぐ力を高めるということだ。
各企業はどこで利益を上げるのかを明確にし、10年計画で実現してほしい。人口減少社会にあって成長する企業ができれば、その地域には雇用が生まれ、街が残る。
われわれが暮らすうえで最低限必要なサービスを維持するには、30万人ほどの人口規模が必要だ。30万人商圏を築くには集住が不可避だ。
集住を促すには、住み慣れた自宅はそのまま残し、エリアごとに高齢者が集住できるようセカンドハウスを整備する「地域内での二地域居住」は一案だ。人口を集約すれば、少ない人手でさまざまなサービスを届けることができる。
例えば、県立病院をタワーマンションにして低層階は病院、上層階は居住エリアにする。こうすれば、住民はエレベーターで降りれば病院があるという暮らしが実現する。その周辺に都市機能を集めれば、買い物も、役所への届け出もできる。こうしたコンパクトな街づくりが求められる。
人口減少をむしろバネとし、「戦略的縮小による成長」を実現すれば、小さくてもキラリと輝く国に変えることができる。その道筋をつけることが、私どもの世代の役割だ。
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講演は17日、京成ホテルミラマーレ(千葉市中央区)で行われた。
かわい・まさし 昭和38年、名古屋市生まれ。中央大卒。人口問題の第一人者のジャーナリストで、人口減少戦略議員連盟の特別顧問や高知大、大正大客員教授、産経新聞客員論説委員を務める。内閣官房や厚生労働省、人事院の有識者会議の委員も兼務。著書にベストセラーの『未来の年表』のほか、『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』『日本の少子化 百年の迷走』など。