千葉「正論」懇話会 河合雅司氏講演詳報「人口減を前提に、戦略的縮小を」
千葉「正論」懇話会(会長=宮澤英男・千葉信用金庫理事長)の第85回講演会で、「人口減少対策総合研究所」理事長の河合雅司氏が「縮んで勝つ 人口減少日本の活路」と題し、講演した。日本の急激な人口減少の実情を詳細に分析し、今後は人口減少を前提に、戦略的縮小による企業経営や街づくりを進める必要性を強調した。講演の要旨は以下の通り。 昨年の日本人の出生数は72万7千人ほどだった。過去5年の出生数は前年比5%ほどの減少となっている。このペースが続けば単純計算で2070年ごろには30万台前半になる。 私は人口減少を「静かなる有事」と名付け、四半世紀前から警鐘を鳴らしてきた。だが、政府は対策を後回しにし、選択肢が随分なくなった。いまや危機的状況だ。 2040年代には毎年、100万人ほど人口は減り、内需が急速に縮む。 政府は2070年代までに総人口が今の3割減、100年後には6割減るとの見通しを立てているが、実際の出生数は政府予測の6~7倍のスピードで減っている。この政府予測は甘い。 人口推計は年金の財政検証に使われる。あまりリアルな予測を示せば年金財政の破綻を認めざるを得なくなるので、社会不安が起きないような数字を出しているとしか思えない。 現状の日本社会はもう続かない。今後は相当、小さな国になる。企業経営も地域経営(街づくり)も、50年先に日本人人口が半減することを前提にスタイルを変えるほかない。 新卒採用者の絶対数が減るのだから、賃上げ競争をしてもどの職種も人手不足を解消できない。しかも、20~64歳のマーケットは年に70万人規模で縮小していく。 とりわけ農業は深刻だ。若い人の参入は進まず、2030年までに現在の東北地方の農地(80万平方メートル)をはるかに上回る規模が減るとの推計もある。食料危機への対策は待ったなしだ。 内需が縮む中で、高齢者マーケットはシェアを伸ばす。75歳以上だけが増え、高齢女性の独り暮らしが多くなる。貧しい高齢者が増える。 千葉県も今後40年で人口が2割少なくなる。高齢化が相当進み、社会の支え手は減る。