年間収入11億円を叩き出す「都バスのドル箱路線」東22系統。東京メトロ有楽町線の新線と「ルート被り」で将来的にピンチ
このように一度の運行における「回転率の良さ」があるからこそ、1路線で10億円単位の収入獲得が可能となるのだ。 ③バス自体の回転率の良さ 距離に比例して加算運賃を取る他のバス業者と違い、都営バスは基本的に距離にかかわらず210円の均一運賃だ。片道1時間を超えるような運行区間が長い路線は、他の交通機関より「お得感」が強くなる。そのため長い区間を通しで乗る客も多く、利益率が低くなりがちだ。 一方「東22」は、錦糸町駅前~東陽町駅間を片道17分程度で1日150往復以上運行している。東京駅丸の内北口行きを含めれば、200往復以上にもなる。
こうしたバス自体の回転率の良さもドル箱路線たるゆえんだ。 ④地味にアップダウンの多い地形 「東22」が走る四ツ目通りは、仙台堀川・小名木川にかかる橋を通るため、緩やかな上り坂・下り坂がやや多い。沿線のスーパーなどへの買い物のために数百mの短距離でもバスに乗る高齢者も多いという。 ⑤歴史的背景 「東22」は路面電車時代の都電の看板路線ルートとも重なることもあり、目的地となるような場所が、コンパクトに沿線に集中している。
こうした要素が重なって、「東22」は都営バスの屋台骨となったのだ。 ■地下鉄開通で「ドル箱路線」でなくなる? 気になるのは、有楽町線の新線開業による「東22」への影響だ。 都営バスは、地下鉄路線が開業するたびにルートが重複する路線の乗客を奪われてきた。 副都心線の開業で「池86」(池袋サンシャインシティ~渋谷駅東口)の乗客が54%減少し、日暮里舎人ライナーの開業で「里48」(日暮里駅~見沼代親水公園駅)の乗客が85%減少した。
「東22」も同様の運命をたどるのか、考えてみよう。 まず、大幅な減便は避けられないだろう。 ただ、地下鉄はバスと並行する住吉駅~東陽町駅間の途中駅が千石駅(仮称。千石2丁目交差点付近)しかない。前述のようにこまめな短距離利用も多いバス利用者の需要を、地下鉄がそのまま受け止めることは難しいだろう。 また、区役所など目的地がバス停の目の前にある場合はバスを使うメリットが大きい。 さらに有楽町新線が、「東22」の終点である錦糸町に直通するかは不透明だ。JR錦糸町駅やパルコ、アルカキット、オリナスなど大型商業施設へバスで向かう人々も多く、一定の本数はバスを残さざるを得ないだろう。
■好材料はあるものの… そう考えると、新線開通後も「東22」は過去の新線開業の例ほど影響を受けないかもしれない。しかし「年間収入11.3億円・利益3.19億円」といった水準は維持できず、都営バスの経営へのネガティブな影響は必至だろう。 多くの人が期待を寄せる新線の開業。ただ、都営バスにとっては必ずしも歓迎されるものではないようだ。
宮武 和多哉 :ライター