大会3本塁打を記録した敦賀気比Vのヒーロー松本はプロで通用するのか
決勝戦では、すでにほとんどのプロのスカウトが退散していたため、電話で何人かのスカウトに話を聞いたが「ちょっと厳しいだろう」の声が大半だった。 ヤクルトのスカウト部長時代に古田敦也や宮本慎也らを発掘した片岡宏雄さんも「夢のないような話をしますが、今の段階で獲得する球団はないでしょう」と断言した。 「決勝戦の2ランを見ていても、カーブにしっかりと体を残してバットに乗せるなど、その集中力と技術は素晴らしいのですが、練習試合も含めて通算本塁打が5、6本程度では、タイプとしては決してホームランバッターではないでしょう。彼に肩と足があれば面白いのですが、現段階では、プロ候補としては、まったく物足りません。 甲子園というところには魔物がいるといいますが、火事場の馬鹿力的な、彼のような神がかりなことが起こりえるのです。ただ話題性としては抜群なので、こういう選手にしっかりと目をつけていく日ハムあたりが興味を抱く可能性はあるんじゃないですか。 また、今後、大学、社会人に進んで成長する可能性もあります。今の段階でプロに入れば、周囲との力の差に唖然とするでしょうが、そう差のない大学、社会人というレベルの中で野球をしながら自信を深めていき、体力も自信もつけていく選手は少なくありません。 そもそも、スカウトの目は節穴です(笑)。今話題の広島の黒田に関しても、スカウト時代の私は上宮高校時代から知ってはいましたが、プロレベルではないと、判断を下していたくらいですから(笑)。今の段階で獲る球団などないと言った私を数年後に見返して笑い飛ばすような成長をしてもらいたいですね」 前日の2本の満塁弾は、1本目は左投手の田中からカーブを左中間へ、2本目はインサイドのストレートに対して、うまく腕をたたんでレフトへ放り込んだ。その柔軟な対応力に非凡さを感じたし、178センチ、75キロの体格は、まだ線が細く見えるが、逆に言えばパワーアップの可能性を残している。 たとえ、現時点で将来プロで通用するような選手ではないと評価されても、甲子園で“神の打撃”を披露した控えの外野手が、今後、どう成長して、どんな背番号を背負って、春夏連覇をかけた夏を勝ち抜いてくるかに注目である。