南スーダンPKOは維持できる現状なのか? 「戦闘と衝突」「駆けつけ警護」
政府は25日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊部隊の派遣を2017年3月末まで延長することを決めました。同じ日に「派遣継続に関する基本的な考え方」を発表。情勢は「楽観できない状況」としながら、現段階では法的な意味での「武力衝突」は起きていないとして、「PKO参加五原則は、引き続き、維持されるもの」との見解を示しました。取り沙汰される「駆けつけ警護」任務の付与も今後の焦点になりそうです。「衝突」と「戦闘」の違いや、駆けつけ警護について、安全保障・軍縮問題に詳しい元外務省の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。
昨夏の和平合意から一転、再び激しい衝突
我が国は南スーダン共和国でのPKO活動に自衛隊を派遣していますが、同地の情勢は悪化しています。同国が独立したのは2011年。その2年後からキール大統領派とマシャール副大統領(当時)派の対立抗争が表面化しました。2015年8月、両派はいったん和平に合意しましたが、今年の7月から再び激しく衝突するようになり、マシャール副大統領は解任され、国外に脱出しました。 日本の部隊ではありませんが、他国のPKO部隊では基地が襲われ、犠牲者も多数出ています。また、現地で復興や人道支援に従事していたNGOの人たちも危険にさらされています。 我が国では、2015年の安保関連法の改正で可能になった、いわゆる「駆けつけ警護」の任務を自衛隊の派遣部隊に付与する準備が行われている最中に、このような情勢変化が起こったのです。「駆けつけ警護」とは、同じ場所で活動しているNGOや他国の部隊が窮地に陥った場合、自衛隊が駆けつけて警護することです。従来、自衛隊員は自らの生命が危険にさらされた場合にのみ、武器の使用が認められていました。 「駆けつけ警護」が必要となるのは、あくまで「和平あるいは停戦」が成立している中で、局地的に危険な状況が生じる場合です。状況が大幅に悪化して、たとえば、内戦のようになると、そもそもPKOを維持できなくなり、PKO部隊は撤収しなければなりません。そのような場合には「駆けつけ警護」などはありえません。 南スーダンでは現在のところ、国連はPKOの維持は困難との判断をするに至っていませんが、さらに状況が悪化するとそうせざるを得なくなるかもしれません。今は、PKOとしての限界に近い、すれすれの状況になっているようです。