目黒蓮『海のはじまり』、松村北斗『西園寺さん』…“多様性”見せる夏ドラマおすすめ4選
どんな選択肢でもそれがその人の最善の生き方
別のベクトルで“家族”や“親子”の在り方について考えさせられるのが『あの子の子ども』(カンテレ・フジ系/火曜23時)だ。主演は川上福を演じる桜田ひよりと、月島宝を演じる細田佳央太。ごく普通の高校生カップルが、避妊に失敗。アフターピルを処方してもらおうと産婦人科へ行くも、親や学校にバレることを考え躊躇し、「私達に特別なことなんて起こらない」とただ言い聞かせ引き返してしまう、福の葛藤が非常にリアルだ。結果的に、福は妊娠していた。 現状、福と宝は中絶か出産という決断には至っていない。出産を選んだ場合には、宝が働き2人で育てる以外に、「養子縁組」、「里親制度」、「乳児院」など授かった命を託す、あるいはその後将来的に迎えに行くという選択肢も、宝の必死のリサーチにより提示される。 このように、宝は避妊に失敗した際も、福の妊娠が分かった際も、常に福のことを一番に考え寄り添ってきた。誰も悪くないのに、それぞれの家族を巻き込んで、普通の高校生の生活が激変する一大事に発展していく様が、ドキュメンタリーかのように克明に描かれる。作中に“特別”な人物は一人もおらず、誰にでも起こりうる出来事として、「性教育」に真摯に向き合った原作者の想いがしっかりと反映されている。不安、葛藤、激昂、希望、あらゆる感情を全身で表現する桜田の“今しか出来ない”体当たり演技は刮目に値する。 “人を好きになる気持ち”の多様性をはっきりと打ち出しているのは、日向坂46・加藤史帆と森カンナが主演を務める『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』(MBS/木曜深夜)だ。『おっさんずラブ』シリーズ(テレビ朝日系)を筆頭に隆盛を誇るボーイズラブ作品だが、その一方で近年徐々に増えているガールズラブ作品の一つだ。 加藤演じる兎田彩香は、仕事で助けられたことをきっかけに、森演じる先輩・鹿納弘子に恋をする。とにかく弘子先輩が大好きで、ありったけの想いを込めて猛アピールする彩香。その好意に気づかないフリをしかわしているが、実は生粋の女たらしだった弘子先輩。同性同士だからこそのすれ違いも多々あるが、コミカルにテンポよく描かれ、彩香の諦めないひたむきさに思わず彼女を応援したくなる。 今作では、弘子先輩が通うレズビアンバーのママや常連たちが当たり前にある存在として日常的に描かれる。また、「好きになった人がたまたま同性(女性)だった」というボカし方をせずに、「私、女の人が好きなんです」と彩香が宣言することも含め、人の数だけ恋の形があることを示している。 家族、親子、恋愛の多様性がそれぞれに描かれる夏ドラマ。最終的な選択がどんなものであっても、それがその人の最善の生き方なのであろう。
こじらぶ