センバツ高校野球 別海躍進、町が負った! 曽根興三町長がエール /北海道
◇「苦境に活気」5000万円補助へ 18日開幕の第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に21世紀枠で出場する別海。町はチームの遠征や全校応援への補助を決めるなど、地域を挙げて選手らを後押しする。アマチュア野球審判の資格も持つ別海町の曽根興三町長(72)に、春夏通じて初の甲子園へ挑む野球部へのエールを聞いた。【聞き手・円谷美晶】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち ――別海のセンバツ出場は、町全体にどのような影響を与えていますか。 ◆みんなびっくりしています。道高野連が推薦してくれた時から期待はしていましたが、名前を呼ばれるまでは全く分からない話ですから。決まった時は本当にうれしくて、涙が出ました。 今、酪農も水産業も大変厳しい状況にあります。酪農は生産資材価格の高騰や生産調整などもあり、水産も(主力の)ホタテが中国による日本産水産物輸入停止の影響を受けている。暗い話題が多かったが、センバツ出場と河﨑秋子さんの直木賞受賞の知らせは町に活気を取り戻してくれました。 ――野球部の遠征費や全校応援費用の一部として、総額5000万円の補助を決めました。 ◆センバツ出場に当たって、一般的には9000万円ほどかかると聞いています。高校生が頑張って、町を誇れる、全国に別海の名前を売れることをやってくれた。お金のことで困らせたくはないという思いです。2023年度もふるさと納税が好調で、活用することを決めました。勝ち進んでさらに経費がかかるようなら、すぐに追加予算を計上したいと考えています。 野球部は、うちの町だけでなく日本中のいろいろな境遇に置かれた高校生に勇気を与えてくれたのではないでしょうか。選手たちを応援することは、納税してくれた人たちを裏切る使い方ではないと思っています。 ――ご自身も野球の経験者です。 ◆私は中学時代から野球をやっていましたが、高校の時に学校を入り直したこともあり、やめてしまいました。町役場に入ってからはずっと軟式野球をやっています。 軟式野球を始めた頃、先輩から「審判がいなければ野球の試合はできないんだぞ」と審判の資格取得を勧められ、26歳ごろに取りました。今でも軟式の試合ならジャッジできます。町長になるまでは、土日はずっと少年野球の審判を務めていました。だからルールにはうるさいんですよ(笑い)。 ――野球への思い入れも強いのですね。 ◆それはすごくあります。以前は町内の8小学校、8中学校のそれぞれに野球チームがあり、うちの町の代表になることが大変だった。それが今では単独でチームを組める中学は1校だけ。野球をやる子供は少なくなりました。もちろん、元気よくスポーツをやれるなら、サッカーでも何でもいいのです。苦労しながら自分の努力で何かを成し遂げる喜びを経験することは、社会に出てからも支えの一つになると思います。 ――甲子園では選手たちにどのようなプレーを期待していますか。 ◆まずは萎縮しないで、のびのびと。普段練習している力を出してもらえることが一番です。それがなかなか難しいことかもしれませんが。野球に限らず、自分が立ち向かわなければいけない出来事に対して、持てる力を最大限発揮できる。そういう経験を積むことが大切だと思います。 スポーツなので勝つ人間がいれば負ける人間もいますが、その過程で、自分の能力を精いっぱい出せたと思えるプレーをしてほしいです。私も特別な公務が入らない限り、甲子園へ応援に行きたいと思っています。