地震や生活への不安消えるまで、心の避難生活は終わらない【河原小避難所】
もろくなった地盤に追い打ちをかける豪雨
1日の雨量が200ミリに達した日の夜。午後11時半、自宅から体育館に一時避難してきた男性から、数キロ離れた道路脇ののり面が崩れていることが知らされた。警戒していた佐賀県職員から連絡を受けた堀田さんは、2日後に開会を控えた村議会の書類準備を取りやめ、役場から避難所に駆けつけた。すぐに、消防団員の男性とともに、消防車両で現場の確認に出た。 近年にない雨量に耐えきれなかったのか、のり面は崩れ、雨水管がむき出しになり、茶色の土砂が道路一面に流れ出ていた。「このままでは、体育館に避難したくても、通れないなあ」 暗闇に雨が降り注ぐなか、懐中電灯で状況を確認して、役場の災害担当に対処するよう連絡を入れた。 河原小での避難者数はピーク時の3分の1以下になった。一方で、本震や度重なる地震の揺れで一部の地盤はもろくなっており、住民たちの災害への恐怖心は地震以前よりも当然、増している。帰宅者が増えるのは喜ばしいことだが、同時に、避難所の管理は、帰宅住民への配慮も必要な段階に差し掛かっていた。 翌朝。朝食前に、堀田さんは、パーテーション越しに、お年寄りたちに声をかけた。 「昨晩は、本当にすごかったな」「自宅が雨でやられてないか、後で見に行こうと思っとる」
復興への着実な道をたどるも、新たな問題浮上
今も避難所に暮らす人たちは、自宅の損壊がひどく、住む場所が決まっていない人も多い。長期間の避難生活の疲れに加え、将来の住環境への不安が募り、疲弊するお年寄りも出てきた。近く応援職員の数が減るという話も出ており、当直のシフトが難しくなれば、堀田さんは「避難者たちの不安を考えると、また、自分が泊まり込むしかない」と考えている。避難者減に伴い、仮設住宅への入居の動向次第だが、7月中に村内の避難所が一カ所に統合される可能性もあり、そうなれば、河原小避難所は閉鎖される。 復興への確かな道のりではあるが、一方で、特にお年寄りたちが、避難所での「共生」の交流を失ったとき、別の不安感に襲われるのではないかと危惧している。 「閉鎖されて、ほかの避難所に住民が移られても、一部の方々が仮設住宅に入られても、住民同士の絆で、見守りやケアを続けなくては、きっと誰かが孤立してしまう」 住民たちにとって、地震や生活への不安が消えるまで、心の避難生活は終わらない。そのときまで、堀田さんの「正念場」はずっと続く。 (取材・文・撮影:木野千尋)