「ゲバルト」展が東京日仏学院などで開催。反暴力的反応とその美的様式を探る
制度の暴力のなかで特定の芸術形態がどのように発展していくのかを示そうとする展覧会「ゲバルト」展が、東京日仏学院、CAVE-AYUMI GALLERY、セッションハウスで開催される。会期は5月18日~6月16日。キュレーターはアレクサンドル・タルバ。 本展を主宰するのはゲバルト団体(アレクサンドル・タルバ、平居香子、宮内芽依、アントワーヌ・ハルプク、ガーリン)。2023年5月に東京で設立された芸術的・政治的団体であり、キュレーション集団として構想された。積極的参画の芸術実践や革命運動の歴史、アクション・行動・行為、ゲリラ、儀式、暴動、デモ、市民的不服従、共同体などの反乱の現代的な様式を研究するためのプラットフォームとしても機能しており、またプロレタリアの伝統を受け継ぎ、世界中の被抑圧者と連帯し、市場の論理に対抗して、反資本主義的な現代アートのビジョンを擁護。さらに直接行動としての美学や象徴的な武器としての芸術を要求するという。 本展キュレーターのタルバはカビール系のフランス人・アルジェリア人の研究者・キュレーター。パリ第8大学にて博士号(美学)取得、東京大学総合文化研究科超域文化専攻表象文化論研究室の客員研究員でもある。戦後美術・現代アートにおける原爆の表象と経済・技術的合理性の批判、及び被爆者の記憶と反核ラディカリズムの関係性について考察しており、バーチャルという概念、無政府主義の哲学、革命運動の歴史についても研究対象としている。 「ゲバルト」とはドイツ語で「暴力」を意味する言葉。1960年代、日本の国家と警察の暴力に直面した新左翼は、ゲバルトという言葉をつかみ取り使用した。彼らの語法によれば「暴力」は体制側による暴力、言い換えれば国家の目的に奉仕する暴力を意味し、逆にゲバルトはその反動、つまり「反暴力」を意味したという。 反暴力は、法維持的暴力に対するすべての抵抗の副産物として、反乱の手段と正当性についての考察と切り離すことはできない。本展で展示される作品は、こうした反乱のメタファーや積極的参画実践にもとづいている。国家の暴力、資本主義の制度的抑圧、あるいは制度的権威主義(プロパガンダ、検閲、監視)に直面したそれらの作品は、様々な反暴力的反応とその美的様式を反映するものである。 出展作家は足立正生、nadir B. + 三浦一壮、Cabaret Courant faible(弱流キャバレー)、バディ・ダルル、遠藤薫、FanXoa、ジャン=バティスト・ファーカス、太湯雅晴、ユニ・ホン・シャープ、石川雷太、城之内元晴、キュンチョメ、三宅砂織、Onirisme Collectif、ミグリン・パルマヌ、嶋田美子。 本展は、制度の暴力に対する様々な抵抗のかたちを視野に入れたものだ。抵抗の形態として見出された芸術のパフォーマティヴィティや、直接行動で社会に変化をもたらす可能性についての政治的な問いは、上述したような歴史的なアプローチにもとづくという。