パリ五輪へ玉井陸斗は「異次元」完成度、寺内健さん太鼓判 他メンバーも仕上がり順調/中川真依
パリオリンピック(五輪)開幕まで、あと1カ月ちょっと。アメリカ国内では、今まさにパリ五輪代表選考会が行われている。続々とメンバーが決定し、ニュースやSNSからもオリンピックがさらに間近になってきた事を感じている。 【写真】飛び込みのパリ五輪テスト大会で優勝した玉井陸斗 日本は既に決まっている5名の代表選手。我が国も五輪に焦点を当て、日々練習に励んでいる。 5月からは、毎月10日間ほどの代表合宿を実施。6月も数日前まで合宿が行われていた。 そこで支援スタッフとして選手たちと共に合宿に参加していた寺内健さんに、選手たちの様子を聞いた。寺内さんは、東京五輪を最後に引退した日本のレジェンドダイバー。今は、同じ所属である坂井丞(ミキハウス)の指導をしている。 話によると、全体として選手たちの調子はかなり上がってきている。特に玉井陸斗(JSS宝塚)は「異次元」と表現するほどの完成度の高さだという。 10メートルから飛ぶだけでも身体への負担はかなりのもの。玉井はさらに、世界でもトップクラスの難易度の高さを持っている。そのこともあり、東京五輪の前後は腰痛などに悩む事も多かった。しかし、今は練習内容や本数をうまく調整し、大きなケガもなく練習を続けている。 そして、長年指導を受けている馬淵崇英コーチとの息もピッタリのようだ。見ていて余裕すら感じるほど落ち着いた様子で練習に取り組めている。 そして、チームメイトでもある荒井祭里(JSS宝塚)もいい仕上がりになってきている。その背景には、5月に行われたパリオープン大会での優勝がある。演技にもその気持ちがしっかりと表れてきているようだ。 本人が苦手意識としている107B(前宙返り3回半・エビ型)の回転にも軽さが出てきた。今ある自信をしっかりと心に留め、本番に向けて練習に励んで欲しいと思う。 そして、他の3人は板飛び込みの選手。 ちょうど合宿中だった6月中旬に、2024年ボードが合宿先のプールに設置された。同じ素材で作られているにも関わらず、毎年作られるボードの性質は違う。それが飛板飛び込みの難しいところである。しかし、選手たちにとって今年のボードはとても相性がいいようだ。今年は「柔らかくて、跳ね返りが強い」ところが特徴。その板の性質をしっかりと掴み、どの選手も演技に活かせている。 その中で、三上紗也可(日本体育大学)は、パリに向けて入水技術にかなりの時間をかけ、徹底的に練習してきた。 年々レベルが上がってきている世界を見ていても、ノースプラッシュである事は高得点を取るためには絶対条件。三上の武器であるジャンプ力にノースプラッシュが加わり、順調に完成度に磨きがかかっているようだ。 榎本遼香(栃木トヨタ)も負けてはいない。いつも淡々と目標に向かって進む姿が印象的な榎本。寺内さんが見ても、「今が一番調子がいい」と感じるほどの出来栄えだ。高さに加え、キレも出てきた。難易度を取っても世界で充分に戦うことができる。 日本は、女子板飛び込みだけが唯一2枠を獲得した。2人そろって決勝で戦う姿が楽しみである。 今大会最年長の坂井は、昨年の9月から寺内コーチの元で練習を始めた。飛び込み一家に生まれ、天性でここまできた坂井に、徹底的に基礎練習を叩き込むところからスタート。それがようやく演技にも表れ始めた。本人も基礎の大切さを実感しているようだ。持って生まれた才能に基礎技術が加わり、まだまだ成長過程の坂井にも期待が高まる。 寺内コーチについてもらってからは、練習メニューは全てコーチが決めているという。幼少期から過酷な練習を積み、6度の五輪を経験しているコーチの指導を受けて望むパリ五輪。本人の中でも特別な一戦になるだろう。 日頃、選手たちの練習を見られる機会はなかなかない。しかし、寺内さんの話を聞き、選手たちのパワーアップした姿を想像しただけでワクワクした。飛込競技の試合までは、残り1カ月半ほど。とにかくケガなく試合を迎えられる事を一番に願い、エールを送りたい。(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)