動くと助かるあれこれ おむつ交換や着がえ 介護の負担を最も軽減する介護ベッドの使い方
「持ち上げない」介護をするために、福祉用具を徹底活用
「いかに体に負担をかけない介護をするか」ということが、現在、介護業界の大きなテーマになっています。 私の所属する訪問介護事業所では、定期的に研修を受けることになっているのですが、先日ノーリフティングケアに関する研修がありました。 「ノーリフティング」とは、「持ち上げない」。ノーリフティングケアとは、つまり、力技で体を持ち上げたり、抱え上げたりしない介護、ということです。 力技がダメなのは、初任者研修でたっぷり習いました。私はわかっていることだわ、と思っていたら…。まったくの不勉強でした。私が初任者研修を受けた4年前より、介護技術はさらに先へ進んでいたようです。 ノーリフティングケアは、オーストラリア発祥とされている、介護や看護における腰痛予防対策とのことです。日本では「ノーリフト」は、日本ノーリフト協会が商標登録している用語です。 オーストラリアでは、体に負担をかけない介護の仕方が徹底しているそうですね。同国では、単に「持ち上げない」を標語にするのではなく、そのために人力に頼らず福祉用具を使いこなしましょう、と提案しているようです。 介護ベッドでは、高さ調節機能を使うのは当然として、上半身を起こすリクライニング機能も活用していきます。ベッド上で自力での起き上がりが難しい方の場合、介護者が上半身を支え、てこの原理で上体を起こす方法を初任者研修で習いました。現場でも実践しています。しかし、ノーリフティングケアでは、リクライニング機能で上体をほとんど起こしてしまいます。 あぁそうか…! 言われてみれば、介護ベッドにはリクライニング機能があるのだから、それを初めから使えばよかったのですよね。コロンブスの卵的発想です。
訪問介護の現場では介護ベッドが必ずあるわけではない
ただ、これは根本的なことなのですが、老人ホームなどの施設介護と違って、訪問介護の場合、すべてのお宅で介護ベッドが使われているわけではないのですね…。私が訪問している中でも、通常タイプのベッドのため、高さを動かすことができないお宅があります。結局は初任者研修で習ったボディメカニクスの実技を使わざるを得ず、なかなか理想通りにはいきません。 個人のお宅だと、便利な福祉用具をどれだけ導入するかは、ご家族の考えによります。すべてのご家庭で備えてもらうのは難しいところです。 ちなみに介護ベッドは、要介護2以上であれば、介護保険でレンタル可能です。月額1000円前後のようです(1割負担の場合)。 その他、前述の事業所の研修では、「スライディングシート」の使い方も教わりました。「スライディング=滑る」で、表面がツルツルした布です。 ベッド上で体を横や上方に移動したいとき、あるいはベッドから車椅子に移乗したいとき、体の下にこのシートを敷けば、力を入れずに、スーッと動くことができます。これもまた、「持ち上げない」介護の発想です。 介護される側の役で、実際に試してみました。わ、少しの摩擦もなくスルッと動いていく! 簡単にベッドから車椅子に乗り移ることができました。 福祉用具は介護をする側だけでなく、介護される側にとっても体の負担を軽くしてくれるのだなと、身をもって知ることができました。
水沼三佳子