【検証】令和の米騒動は本当に「テレビが煽ったから」なのか? フジは積極的に報道…冷静だった2つの局は
“令和の米騒動”の報道に批判的? テレビ朝日とNHK
テレビ朝日は、情報番組「グッド! モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」「大下容子ワイド! スクランブル」や、ニュース番組「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」などで、米の品薄や価格高騰について伝えていた。だが、“令和の米騒動”という表現はできるだけ避けていた印象を持った。 8月20日の「グッド! モーニング」でこの問題を報じていたが、“令和の米騒動”と報じる一部メディアもあると触れつつ、農水省は「ひっ迫していない」と見ていると伝えた。「在庫量が少ない」という情報が独り歩きしていること、南海トラフ巨大地震の注意情報で必要以上に購入備蓄する人が急増したことで品切れ状態が続いているとして“令和の米騒動”を強調する他のメディアとは距離を置き、むしろやや批判的に伝えている。 テレ朝では「米不足」「価格高騰」など、テロップでもできるだけ正確な表現に努めていた。また、大阪府の吉村洋文知事が備蓄米の放出を政府に要請したことに対する、農水大臣の反応、それに対する知事のコメントなども詳しく報じている(8月28日「羽鳥慎一モーニングショー」)。他局ではここまで詳しいものはみられなかった。 生産者に焦点を当てて伝えようとする姿勢も感じられた。米農家の苦労や悩みにもフォーカスし、米の価格は生産者の苦労に見合ったものとはいえないのでは? と視聴者に問う。JA全農あきた運営委員会会長が「現場に行くたびにもう農業をやめるという声が本当に多いです。聞いていてつらいです。どうか米価を上げて少しでも農家の思いに応えたい…」と涙ながらに訴える場面を伝えた9月5日の「大下容子ワイド! スクランブル」がその典型だ。 テレ朝の報道を見ていると、米問題の仕組み(日本の米政策)の複雑さを詳しく知るがゆえに、“米騒動”として、どこか茶化すような姿勢に与するのは避けたいという意識が感じられる。筆者が調べたところ、テレ朝の放送では、他メディアに言及するケース以外で“米騒動”という言葉を使用していなかった。 とはいえ、テレ朝も、米の品薄や価格高騰などの取材先はフジや日テレ、TBSなどとほぼ同じだ。また、ニュース記事のネット配信記事(ABEMA NEWS)では「令和の米騒動」という言葉を使っていることは注記しておきたい。やはり「わかりやすさ」という点では、代わる言葉が見当たらないのかもしれない。 その点、NHKは“令和の米騒動”という表現を一切使っていない。あくまで米の「品薄状態」と、“不足”という表現にとどめている。8月24日「サタデーウオッチ9」などで、店頭では品薄状態になっていることや今後の出荷の見通しなどを伝えていた。