日銀「国債買い入れ減額」も具体策先送り 住宅ローン固定金利は「8月以降、引き上げ傾向鮮明に」
日銀は、長期国債の買い入れを減額する方針を決定した。今後1~2年程度の具体的な減額計画は、次回7月の会合で決める。 【画像】円相場の見通しは?
「例外的に」市場意見集約へ
日銀は、3月にマイナス金利を解除し17年ぶりの利上げに踏み切ったが、大規模緩和からの転換は、経済や市場への影響を見極めて慎重に進める姿勢を示し、国債買い入れはこれまでと同じ月6兆円程度で続けてきた。今回、保有している国債残高の縮小に向け手をつけることを決めたが、具体的に買い入れ減額をどう進めていくかの決定は次回に先送りした。 「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切だと考えている」。会見で植田総裁が強調したのは市場への配慮だ。日銀は、市場参加者の意見を聞く場を設け、次回会合で1~2年先までの具体的な減額ペースを示す。総裁は「減額する以上は相応な規模」との認識を示す一方で、「丁寧にプロセスを進めたい」と説明した。 事前予告を行ったうえで、減額計画を提示するのは、植田総裁自身も「例外的な措置」と認めたやり方だが、段階を踏んで進めることにした背景には、日銀が国債市場で突出した存在感を持つようになっていることがある。 10年を超えて続いた異次元緩和で大量の国債を買い入れてきた結果、日銀が抱える国債は2023年末時点で581兆円に達し、異次元緩和前の6倍以上の水準にまで膨れ上がった。政府の発行残高の半分を占めるに至り、長期金利の動向に大きな影響を及ぼしている。 金利急騰などで市場が不安定になるのを避けるため、次回会合まで1カ月半かけて、減額の内容を慎重に詰めていく姿勢を示したと言える。
減額具体策先送りで一時158円台まで下落
今回日銀に国債買い入れ減額を促した要因の一つは、円安進行だったとの見方が強い。4月の会合後の会見で植田総裁が、「基調的な物価上昇率にここまでの円安が今のところ大きな影響を与えているということではない」などと発言したことが「円安容認」と受け止められ、円相場では一時1ドル=160円台まで円安が進んだ。その後、総裁は5月7日に岸田首相と面会した後、「最近の円安について、政策運営上、十分注視をしていくことを確認した」と述べ、それまでの発言を事実上軌道修正した経緯がある。 国債買い入れの減額は、通常、円高要因となるが、今回の決定内容公表後、円相場は円安に振れた。公表前の14日午前は、1ドル=157円台前半で取引されていたが、正午過ぎの発表後、157円90銭まで一気に円売りが進んだ。減額の具体的な内容が次回会合に持ち越されたことで、日銀の姿勢が引き締めに「慎重」だと受け止められたためで、植田総裁の会見直前の午後3時前には、一時4月29日以来の水準となる158円台をつけるなど円安が加速した。