日銀「国債買い入れ減額」も具体策先送り 住宅ローン固定金利は「8月以降、引き上げ傾向鮮明に」
7月利上げ「当然あり得る」
こうしたなか、次回7月会合での利上げについて植田総裁は、経済・物価情勢に関する情報次第で「当然あり得る話だ」と述べ、国債買い入れ減額の着手と同時に追加利上げに動く可能性を否定しなかった。 一方、アメリカでは、12日のFOMC=連邦公開市場委員会で、3月時点で年3回を見込んでいた利下げ回数見通しが1回に修正された。日銀が早期利上げに足を踏み出しても、アメリカが利下げに動かなければ、日米金利差が開いた状態が続き、強い円売り圧力が継続する可能性は高い。 日銀が国債買い入れを減らしていくことは、大量保有で抑え込まれていた長期金利が上昇する可能性につながるが、14日の債券市場では、長期金利の代表的な指標となっている10年物の国債の利回りは0.915%まで低下する場面が見られた。減額を直ちに始めずに計画を先送りしたことで、金融政策の正常化に時間がかかるとの見方から、国債を買い戻す動きが強まったためだ。 住宅ローンの固定型金利は、6月は10年固定の基準金利が3メガバンク平均で13年ぶりの高水準となるなど引き上げの動きが相次いだが、住宅ローン比較サービスのモゲチェックは、「日銀の国債買い入れ計画具体化に向け、長期金利の上昇基調が強まっていくことで、8月以降、固定型の引き上げ傾向がより鮮明になる可能性がある」としている。
「金利」に加え「量」でも正常化へ
国債買い入れ減額計画の中身が明らかになる次回7月の会合は、植田総裁が追加利上げの可能性に含みを持たせるなか、関心度が一段と高まってきた。減額策の具体的内容次第で長期金利は上げ足を速める可能性がある一方、短期金利をめぐる追加利上げは秋以降とみる見方も強い。 住宅ローン固定・変動金利を左右する長短金利はどういう動きを見せていくのか。「金利」に加え「量」の面でも、金融政策の正常化に踏み出した日銀は、引き締めに向けての新たな局面に入ることになった。 (執筆:フジテレビ解説副委員長 智田裕一)
智田裕一