なぜ出ない? 全チーム登場で1本塁打は「最少記録」 センバツ
兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開催中の第94回選抜高校野球大会は、1回戦16試合が終わった時点で大会本塁打数はわずか1本。全チームが初戦を終えた時点での本塁打数としては、金属バットが登場した第47回大会(1975年)以降で最も少ない。「野球の華」であるホームランは、このまま低調が続くのか。それとも2回戦以降に流れが変わるのか。甲子園最多勝利監督である智弁和歌山の高嶋仁前監督(75)に聞いた。 【まだ1枚だけですが… 今大会の全ホームランを写真で】 19日の開幕試合で浦和学院の5番・高山維月(3年)がバックスクリーン右に運んだのが今大会唯一の本塁打だ。「2年生四天王」のうち強打者として注目された広陵(広島)の真鍋慧(けいた)、九州国際大付(福岡)の佐倉俠史朗、花巻東の佐々木麟太郎、優勝候補の大阪桐蔭の打者からも快音が聞こえなかった。 記念大会などに伴う出場チーム数や試合数、天候などで違いはあるが、全チームが初戦を終えた時点で本塁打数がこれまで最も少なかったのは3本で複数回ある。前回大会も初本塁打が開幕13試合目と金属バットの導入後、最も遅かったが、1回戦の段階で3本のアーチが出ている。 「強打の智弁」で知られ、甲子園歴代最多68勝を誇る高嶋さんは「しゃあない(仕方ない)ですよ」ときっぱり言う。理由は、新型コロナウイルスの感染拡大による実戦不足とみる。 本来なら3月に対外試合が解禁され、打者は他チームの投手が投げる球に目を慣らして甲子園に挑む。高嶋さんが監督の時代は冬場の体力作りを経て、センバツ出場が決まった1月下旬以降、紅白戦を含めて30試合を目安に行い、実戦感覚を取り戻していたという。 だが、今年は1月から新型コロナの「第6波」が始まって感染者が急増し、多くの都道府県でまん延防止等重点措置が発令された。チームの活動が制限され、関西に来て初めて練習試合を組んだチームもあった。高嶋さんは「大舞台で打ちたい気持ちが強くなれば、さらに見極めが難しい。(今大会は)特に高めのボール球に手を出す選手が目立つ」と指摘する。実際、1回戦で14三振を喫して延長十一回の末に敗れた天理(奈良)の中村良二監督(53)は「どの学校も調整不足は否めない」と調整の難しさを漏らした。 それでも高嶋さんは「大会が進めば、打者の目が慣れ始めて、(本塁打は)ぼちぼち出てくると思う」と見る。打者が実戦勘を取り戻す一方で、試合日程が詰まることで投手の疲労も増えてくるだけに、打者にもチャンスが出てくる。 戦前ではしばしば大会通算本塁打「0」があったセンバツ。大会通算本塁打が「1」だったのは木製バット最後の第46回大会(1974年)までさかのぼる。観衆を沸かせる一発は、何本出るか。【川村咲平】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。